自作ラノベ。人によっては不快に感じられるような陰湿で過激な内容なので注意。
ある架空の世界で。元々は人間のものだった地上世界に、いずこからか現れたとある神が目をつけ支配した。この神は狂った神だった。神には自分の血を受け継ぐ民たちがいた。彼らは天人と呼ばれ、神の寵愛を受けけていた。彼らは人間を凌ぐ力を持ち、容姿は細面でそれは美しい。純血ほどその傾向が強い。寿命は長く、三百年以上の時を生きる。彼らは耽美至上主義、享楽至上主義で、自分たちの雅に酔いしれた。そして、人間たちは天人たちを貴族と呼び敬うことを強要され、彼らに虐げられた。貴族たちは人間を自分たちに仕える労働者として、苦しい仕事は全部人間に押し付けた。
そこに年の頃十三になるスレイという名の人間の少女がいた。少女は歳の離れた五歳の幼い弟と母親と三人暮し。
母親は美しい女で、男遊びが激しかった。スレイたちはその淫行の結果できた子供で、父親の名前さえ分からなかった。
母親は育児もほったらかして男を追いかけてばかりいたが、当然そんな有り様では幸せが掴めるはずもなかった。
弟は障害児であった。スレイは母親の代わりに弟の面倒を見ていた。しかし、そんな荒んだ生活の中、純真な弟の存在はスレイの癒しとなっていた。
スレイの中で母親や自分の世界に対する憎しみが育っていった。
この世界には貴族が魔法の力で穿った巨大な大穴がある。その穴に落とされたものは普通の力では這い上がれなくなる。
貴族たちは不要になったものをこの穴の中に放り居れる。目障りな人間や、人間の死体、ゴミなどだ。
貴族たちは自分の品格を唱え、殺人や死と言うものを穢れと言って過剰に嫌悪する。例え相手が人間であったもだ。しかし、死ぬまで相手を酷使することには着目していない。そして、それを処理するために作られたのがこの大穴と言うわけだった。
この大穴の中はこの世に見捨てられた者の巣窟だ。それでもそこは人が生き、スラムとして機能しているらしい。
スレイの母親は子供を邪魔に思う気持ちが募り、薬などに手を出し情緒不安定になっていた。そしてそんなある日、この大穴に子供たちを捨て去ってしまう。そして、スレイと弟はこのスラムで生きることになった。
そこは薄汚れて荒んだ街だった。日は照らず土地は貧しく生活の糧にも乏しく、時折落ちてくるゴミの中から食べ物を探すこともザラであった。僅かな糧を奪い合うため殺人なども多発した。死んだ人間の肉を口にする者も出た。
子供が生きていくには厳しすぎる環境。それでもスレイはここでこのまま朽ちていくことなど悔しかった。幼い少女の瞳に憎しみの炎が宿っていった。
スラムは力の世界だった。力のない者は死んでいくしかない。そして、力の強い者はこの世界で幅を利かせてなんとか生きていくことができたのだ。
他に食べるものもなく死体の肉と向き合った時、スレイは激しい悲しみと吐き気に襲われ堪らない気持ちになった。
特に弟の存在は足手纏いとなってまっていた。ロクな食べ物もないことに弟は泣き叫ぶ。幼児の肉はここではご馳走になるのだ。いつ人狩りに見つかるか知れない。いつも周囲に注意を払い、密かな場所を求めて…スレイはそんな生活に疲れ果てていた…。
そんなある日、スレイはある男に出会う。その男はにこやかでスレイに優しく振る舞い、食べ物を分け与えてやると言う。スレイはこの人なら信用できると思った。
そして、男は一輪の美しい花を取り出した。その花は唯一この痩せた土地で、あちこちに咲いている花だった。その香りを嗅ぐと、スレイの身の周りの風景は一変し、目の前に自分の望むものが現れた。長く目にかかったことのない温かく豪華な料理だ。
スレイはそれを食べてとても幸せな気持ちになった。そして、男はまた食べ物を分け与えてやるから、ただ一人で私と一緒に来なさいと言った。
スレイは弟を一人残して遠くに行くのは心配ではあったものの、あの幸せが忘れられず、一人であの男に付いていってしまう。そして、弟の元に戻ってきてみると、その場はもぬけの殻だった。スレイは凍りに浸させたように真っ青になり必死に弟を探し回った。そうして、見つけたのは弟の見るも無残な姿だった。
そして、周りを見やると、絶望した者があの花の臭いを嗅いで、笑っていた。旗から見ると、そこには何もない。あの花はただの幻覚剤だったのだ。スレイは騙されたことを悟った。
自分のせいで弟はむごたらしく死んだ。もう決して誰も信用すまい。決して癒えない暗い感情が彼女の胸に渦巻き、少女は鬼になった…。可憐な野花が彼女たちを嘲笑っていた…。
スレイがスラムに来て、ニ年が過ぎようとしていた。その容姿は徐々に成長期の美しさに目覚めていった…。
そんな頃、スレイはエースと言う青年に出会う。いかにも不良風の不真面目な男で、それなりに名の知れた食わせ者であった。
この少女は美しく育つだろう。そして、この状況下にあってなお、燃えるような眼光鋭い少女の瞳が、エースには印象的であった。
その容姿は武器にすることができる、自分が教えてやろうかと彼は言い、スレイの手を自分の頬を当てた…。
そして数年、スレイは美しく成長し、自分を守る術、つまり殺しの手段も覚え、エースと共にこのスラムで伸し上がっていった。
スレイを求める男たちは多かった。スレイは彼らに微笑みながら、その誰一人として心を許すことはなかった。そして、彼らを利用して自分の自由自在にしていた。
彼女を守る相方であるエースにさえ心は開かない。男など頼りにならない。自分は一人で生きてきたのだとスレイは自負していた。
そして、胸にはいつも自分を支配しようとする者への憎しみがあった。しかし、長いものに巻かれることも知らずに、反感を買って滅びるなど馬鹿らしいことだとスレイは思った。強い男には媚びておくことだ。そして、自分は安全な場所にいて上手く立ち回り、彼らを操るのだ。
その微笑みが偽りであることをエースだけは知っていた。エースはおまえは心から微笑むことはないのかと彼女に言った。スレイはそんなものは美しい女の特権だろう?この街でそんなものはとうに忘れたと言った。エースはそれを聞いてくつくつとおかしそうに笑った。
それでもエースはスレイとの関係を保った。彼女の心がどうだろうと、エースにはそんなことはどうでもいいのだ。そして、スレイもそれはお互い様であった。お互い利用し合うだけの関係。それでも、スレイの本当の心を知るのは彼だけだった。
壊れた鏡を覗くと母親に面差しが似ていく自分が映っていた…。スレイは鏡を殴りつけた。
そんなある日、彼らに思わぬ蜘蛛の糸が垂らされる。一人の貴族の男がこの地に舞い降りる。天馬が引く水晶の銀細工の馬車から降りたその男の容貌たるや端整端麗で、並み居る貴族たちの中でもこの世のものとは思えぬ美しさであった。正に神の祝福を受けていると言われても、過言ではない。それはとてもこの場には不似合いに思えた。スレイも一瞬我を忘れてその男の美貌に魅入ってしまった。そして、男はフェイトと名乗り、スラムの住人たちに語りかけた。
自分の手にとある血清剤がある。これは天人である自分の血が入っている。それを人間の体に順応するよう特別に調合した。これを体に取り入れれば、幼い子供でも人間の男など遥かに凌ぐ、我々天人たちと同等の力を手に入れることができる。さすれば、この大穴から抜け出すことも容易である。人間たちはその話を聞いて色めきたった。
そして、その証拠としてフェイトは人間の子供にその血清剤を与えた。フェイトは子供にその手で男を殺してみよ、と言った。子供は一人の男に近づき、男の手を軽々とねじ折った。相手を侮った男は絶叫しながら倒れていった。
美しい男。しかし、なんと言う残酷な。貴族であるにも関わらず血の穢れをなんとも思わない。スレイの心にはフェイトに対する嫌悪が湧き上がったが、同時に喉から手が出るほど、その薬が欲しいと思った。あの血清剤があれば、自分はこの環境から抜け出すことが出来る。そして、今まで自分を支配してきたものたちを蹴散らすことができるのだ。
そして、フェイトは言った。残念だが、この血清剤は数に限りがある。このスラムの住人全部に持たせることは無理だ。その一言を受けて、スラムは一気に大規模な殺し合いの惨状と化した。フェイトは狂喜に瞳を輝かせその様子を見ていた。フェイトに近づこうとして突進してくる男を彼は飛ぶようにひらりとかわすと、男の頭を踏み台にしてさらにふわりと高所へ飛んだ。フェイトは彼らをくすくすと笑い嘲弄した。
男たちが殺しあう。スレイは素早く影に隠れ、その惨状を見守っていた。阿鼻叫喚の中人が次々と倒れていく。何という光景だろう。スレイは吐き気を催しながらも、冷静に彼らの様子を見ていた。
男たちは我を忘れて殺しあっている最中だ。そして、フェイトは一人それを悠然と見つめながら街を見回った。スレイは一かバチかその間にフェイトに近づく隙を覗った。そして、皆がフェイトから離れた瞬間を見計らってフェイトに歩みでて薬を求めた。
見やれば美しい娘ではないか。これは驚いた。フェイトはそんなスレイを興味深げに見やった。そして、スレイも同じようなことを思った。近くで見ると、フェイトは本当に美しい男であった。しかし、その面差しは相手を侮蔑するような嘲りに満ちていた。そして、彼は彼女にその血清剤を与えたのだ。
その血清剤を体に取り込むと、激流の中を漂うような感覚に捕らわれスレイの頭は混乱した。しかし、それが過ぎると、すうっと急激に体が覚醒して力が漲るのを感じた。スレイはこの瞬間心から轟然と微笑んだ…。しかし、彼女を待っていたものは…。
満を持して戻ってきたはずの地上だった。フェイトの血清剤はスレイに強い力を与えた。しかし、それには代償があった。通常、誰もスレイの姿をその目に見える者はなく、その声が聞えるものはいなかった。彼女は透明な存在となってしまい、その存在はないものとされた。そして、それを利用して、彼女はフェイトに暗殺者としての仕事を与えられた。それに逆らうことは出来ない。血清剤にあるフェイトの血の力で、フェイトの意志に逆らうことはできない。そして、この血清剤は一種の麻薬のようなもので、これがなければ、精神と体がのた打ち回るような苦痛に襲われる。ゆえにスレイはこの血清剤に依存するしかなかった。フェイトは彼女らのような暗殺者を影と呼んだ。そして、そこにはあのエースの姿もあった。
フェイトは力を持ち、最も神の祝福を受ける男として、貴族たちから祝福を受けていた。しかし、彼は偽善者だ。フェイトの腹の底にあるどす黒いものをスレイたちだけは知っていた。
あるところに人に対しても優しく振舞い、人間の人権を主張しようとする貴族がいた。彼は善人だろう。しかし、フェイトには彼が邪魔であった。そして、フェイトは自分の手は汚さずに、スレイに彼を殺すように命じた。
スレイは自分の行為の醜く深い罪に苦しんだ。しかし、フェイトに逆らうことはできなかった。自分の命のためにスレイはその貴族を殺した。そんな生活の中、スレイの人としての誇りはずたずたになっていった。そして、フェイトは自らの栄華を益々極め、彼は正に全てを自分のものにしようとしていた。スレイはフェイトを激しく憎んだ。しかし、フェイトはそんな彼女の心を容易く見抜き、そして尚それを手の内で弄ぶのだった。そんな憎しみはおまえの逆恨みだとフェイトは言った。おまえは自ら望んで私の手を取ったのだろう。そして、おまえは自分可愛さのために私の血を求めずにはいられないのだと。
スレイは思った。いつか、いつの日か、この男を殺す方法が見つけるまで、自分は生きてやるのだ。途方もない憎しみが彼女を支えた。しかし、それは正しいのか?フェイトの栄光を目の当たりにすると、それはスレイを打ちのめすのだった。それともこんな醜い命などこのまま死んでしまえばいいのだろうか…。スレイは決して強い女ではなかった。いつも揺れ動く激しい激情に捕らわれながら彷徨っていたのだ。
一方エースは環境には深い不満を抱えていたものの、自分の行いについてなど深く考えることもなく仕事をこなして生きていた。エースにとって殺しはストレスの発散となっていた。彼に言わせれば、糞ったれの世界に遠慮する理由などないのである。
スレイたちには貴族に対する暗殺の仕事とは別にもう一つの仕事がある。それは魔物狩りである。この世界とは別次元に魔界と言うものが存在する。それは深い奈落の底に通じ、そこは悪魔たちの住まう世界だ。その悪魔たちが時折、次元の境を越えて、この世界に現れることがある。彼らは神の存在に反応して現れ、天人や人間を食らう。この世界に時折悪魔が現れるようになったのは、神が住まうようになってからだ。そして、天人たちは悪魔と戦う力を持っている。しかし、なかなか進んで戦おうとするものはいない。その代わりの戦力となるのがフェイトの作り出した影たちと言うわけだ。
未知の怪物と戦うのは正に死に物狂いの命がけの仕事である。魔物たちには影の姿が見えてしまうようだ。いくら天人の血の力を借りているとは言え、力の使い方を考えねば死が待つだけだ。しかし、スレイはそこから幾たびも生還した。この死線をくぐる戦いも、全てはあの男をくびり殺す術を得る為だと自分に言い聞かせた。
ある日の魔物討伐の際、相当危険な相手と相対することになった。その仕事はエースと一緒に組むことになった。エースは他の影を利用するだけ利用して協力などしない。そして、この時もスレイを敵のお取りにして逃げようとした。悪魔は人を一人ほどを食らい腹を満たすと、心を静めて魔界に帰るのだ。できるものなら、そのようにしてしまえばいいと言うわけだ。スレイは必死で戦い、戦いながら笑んだ。逆にエースの逃げた道にこそ、大きな悪魔は待ち構えていたのだ。そして、エースは死んだ。スレイは哄笑した。しかし、その頬には何故か涙が伝った…。
そして、あの日の魔物討伐の際、スレイが倒した悪魔が霧となって消滅した際、その腹から穏かに輝く美しい録石が出てきた。
それを拾いあげると、その宝石は喜んだように輝きを増した。そして、そこから詠うような美しい小鳥の鳴き声が聞えてきたのだ。まるでスレイとの出会いを喜んでいるかのように。その録石を手に包み込むと、そこから優しい意識のようなものがスレイの心の中に入り込み、とても癒されるような気持ちになった。この宝石は悪魔に食らわれた美しい小鳥の魂の権化だったのだ。
それから、スレイは一人の時間はいつもその録石の音色に耳を傾け、この時だけは嫌なことなど忘れて心地いい時を過ごした。この宝石に言葉はない。しかし、そこには純粋な温もりが感じられた。それはスレイの傷を包み込むかのようで、それに包まれている間だけは自分に人間らしい感情が宿るような気がしたのだ。この宝石はスレイの何よりの宝物となった。
しかし、そんなある日、起きだして気付くと録石が手元になかった。誰にも見つからぬようにしまっていたはずなのに。必死で探したが見つからない。そして、スレイは後日その居所を見つけたのだ…。フェイトが年頃の貴族の少女と二人で中睦まじく歩いている。フェイトはその少女に微笑みかけた。美しい少女だった。あどけなく純真そうで、身に纏った純白のドレスがよく似合っている。見た瞬間、スレイはこの少女に激しく嫉妬する自分を感じた。まるで醜い自分とは大極である。
そして少女の白く繊細な手を見やると、そこにはあの録石と同じ輝きを放つ宝石の指輪がはめられていた。少女はそれをうっとりした様子で眺め、伯父と慕うフェイトに自分がこんな貴重なものを貰っていいのかと問いかけ、顔をほころばせて礼を言った。フェイトは少女に言葉を返した。この宝石は、下賎の者などには似合わない。おまえのようなものにこそ相応しい。スレイは雷に打たれたようにそれを眺め、その心は抑えきれない憎みに捕らわれた。
フェイトはそんなスレイを見やり、侮蔑したように一笑した。スレイは叫びを上げながら一筋の疾風となって猛然とフェイトに飛び掛った。しかし、その動きはフェイトを眼前にしてぴたりと止められた。振り上げられた手はどうやっても動かない。フェイトはそんな彼女を見やりくすりと笑うと、目に見えない強烈な一撃を浴びせた。スレイは崩れ落ちた。呆然と天を見上げた瞳から涙が伝った…。
そして、あくる日、惨劇は起きたのだ。爽やかな風が吹く静かな空気に包まれた屋敷で、その床が赤い血に染まっている。倒れているのはあの少女だった。柔らかな色の金髪に、透き通った水色の瞳は見開かれ動かない。だらりとたれた細い腕からは血染めになった薄桃色の花が散らばっていた…。そして、スレイは暗い瞳で膝を折りながら、その令嬢を見下ろしていた…。スレイはその手に録石の指輪を取り戻した。しかし、それは凍りついたように輝きを失い、砂のように崩れ去った…。やってしまった後で、どんなに自分が浅ましいかを思い知らされるのだ。それでも自分の感情を止めることができなかった。
丁度そこへ来客者が現れた。それでもスレイはそこから動けず力なく佇んでいた…。そして、現れたのはフェイトだった。そして、彼は言った。おお、なんということだ。可哀相に。一体どんな外道が、こんなに可憐で美しいおまえをこんなにしたのだろう。誰がこんな血の穢れを?誰か来てくれ!そして、フェイトは心底哀れなものを見るような目でスレイを見下ろした。そして、フェイトはこうなることが分かっていたのだ。その上でスレイの行いをただ眺めていた…。そして、その令嬢の葬式は盛大に行われ、多くの貴族が悲しんだのだ。スレイの心は行き場のない怒りと悲しみで粉々に壊れていった。
そして、スレイは罰を受けることになった。幾日も幾日も毎日懲罰房で酷い拷問を受けた。血清剤をもらえることもなくスレイは発狂した。もういっそ死にたいと思ったが、意識は朦朧として、手元に何もなく、自殺する力すらなかった。
そうして、一年が過ぎようとしたある日、スレイは懲罰房からようやく解放される。解放されると思ったのもつかの間、再び血清剤を打たれ、体を拘束されて、スレイはいずこかへ連れ出された。
その場所には深い闇の霧が立ち込めていた。丘があり崖下へとその深い闇が続く。そして、そこから怨念じみたうめき声が風に乗って響いてくる。スレイは場を包む邪悪な空気に緊張が走り、意識がはっきりと覚醒した。
その傍には彼女と同じように幾人もの影が引き立てられている。影をここに集めて何をするつもりなのか。
スレイは影の一人に事情を聞いた。ここは奈落に通じる魔界の扉。扉の主である極竜が飢えに目覚め、ここから解き放たれようとしている。そうすれば、魔界の扉が開き、この世界が混沌に支配される。そうならないように、贄を用意する。その贄が自分たち影なのだと。生身の人間を贄にすれば、さすがの貴族たちの心証も悪くなるし、戦って退けるのも難しく都合の悪い相手。そこで影を使い、貴族たちはさも極竜を自分たちの力で封じ込めたように振舞う寸法なのだと言う。
そして、それは闇から解き放たれ眼前に現れた。それは恐ろしい姿だった。小さな山一つほどもある巨大な体躯、全身は黒光りする鱗に覆われ、体のあちこちは鋭利に尖り、特に巨大な口内は鋭利に尖った牙がびっしり並び、人を数十人は飲み込みそうな雰囲気だった。スレイは恐怖に目を見開き震えた。極竜は荒々しくのたうつように飛び回りながら、逃げ惑う影たちを食いちぎった。あたり一面に鮮血が飛び散った。
このままこの化物に食いちぎられ自分は死ぬのか?世界のためにこの身を犠牲にして、殊勝な話ではないか。そんな彼女の脳裏に一筋の声が振った。君はこのままでいいのか?と。化物の前に傅いて、この世界に傅いて、あの男の前に傅いて…自分にはそんなことはできない!決して、あの男を許さない!!こんな世界など終ってしまえばいい!!瞳が炎が宿り、感情が爆発した。血が沸騰する感覚が体を満たした。スレイの影がくびきから放たれ実体を現した。そのままスレイは極竜目掛けて飛び掛った。フェイトは状況に愕然として、戦士たちを引き連れ、手を下そうとしたが、そこに闇の奧から放たれた不気味な閃光が彼らの目を焼いた。
そして、そこはスレイ一人の独壇場となった。竜の反射速度は恐ろしく速い、それでもそこへ渾身の攻撃を叩きつける。極竜はそれに怯みますます激しく暴れた。右腕を食いちぎられた。激しい痛みが入る。しかし、それでも、右手が使えないなら左手で戦う。尾の一打に内臓が潰される。負けてたまるか。ならばおまえにもっときつい一撃をお見舞いしてやる。そして、ついに致命傷が竜の体を貫く。極竜は一声いななくと、ぐらりと揺れて、そのまま闇の中へと、消えていった。
そして、そこで力を使い果たしたスレイもまた極竜と共にその闇の中へと飲み込まれていった。どこまでも深い奈落へと…。スレイは身に風を受けながらふっと微笑んだ。闇の中へと消えていくと言うのに、何か解放された気分だ。ここまでの罪を犯した自分には似合いの最後だろうと思った。その意識は闇の中に消えていった。
そして、混沌は世界に解き放たれた。まさかこんな事態になるとはフェイトも予想していなかった。これは「おまえ」なのか?フェイトは苦々しい表情で、その深い闇の深遠を見つめていた。その瞳には暗く深い憎悪があった…。
そして、長い眠りの末、スレイは目覚めた。穏かな夢を見ていた気がする。あの母親が夢の中で自分に笑いかけていた。そこは静かな場所で、一面清潔感のある真っ白な部屋が広がっていた。いつの間にか体の傷が全快している。血清剤の禁断症状もない。これは一体…?ここは混沌に満ちる奈落の底ではないのか。自分はまだ夢を見ているのだろうか。壁に耳を当てて外の様子を探ると、闇の中から聞こえたうめき声がはっきりと聞こえる。ここはどこだ!
そこに小さな足音が近づいてきた。現れたのは五、六歳と思われる幼い少年だった。少し痩せ気味な気がしたが、その顔立ちは品よく愛らしい。スレイの様子を見ると少年は、あなたが元気になってよかったと、あどけない笑顔で微笑んだ。ここはどこで彼は何者なのか。それからそこに礼儀正しい世話使いと見受けられる男が現れた。そして、世話使いはスレイとの話を取り持った。
この少年はライフと言い、天人の貴族だ。生まれからとても強い特別な力を持っていた。スレイの体を癒したのもライフの力。ここはやはり冥界の奈落の底の中で、その中にライフが特別な結界を張り、自分の居所としている。
ライフは異母兄弟の兄にその力を恐れられ、呪いをかけられた。呪いによって体は日に日に病み、子供の姿のまま成長することがなく、冥界の奥へと封じ込められ、帰る術はなく幾年もの時をここで過ごしてきたと言う。
奈落の底は広い。ライフは病状のその身で広い範囲は動けないため、冥界の門が開け放たれた今でも、この外に出ることはない。そして、その呪いにより、もうライフの命は長くないのだと言う…。それはあまりに衝撃的な告白だった。
彼らと過ごしていると、彼らはスレイに害意はないようだった。しかし、害意があろうとなかろうと、スレイは今更そんなことはどうでもよかった。ここまでの罪を犯した自分の生死など、もやはどうでもいいことなのだ。
そんなスレイを真っ直ぐ優しさを称えた瞳でライフは見つめた。少年の澄んだ瞳に、スレイは思わず身を硬くして目を逸らした。彼を見ていると、丁度これくらいの年頃で死んだ弟を思い出してしまうのだ。
ライフはそんな彼女に語りかけた。どうしてあなたはそんな苦しそうな目で自分を見るのか。私はあなたを傷つけるような人間ではない。あなたを見て自分と似ていると思った。だから、放っておけなかった。
それに対しスレイは言う。幼い子供が自分を卑下するものではない。真に私を理解してないからそんなことが言える。そして、彼女に触れようとした小さな手を振り払い、言った。私は自分の命ほしさに多くの命をこの手にかけてきた。屑である私が数々の価値のある命を葬ってきたのだ。実に滑稽な話だと思わないか。スレイは皮肉っぽく笑んだ。
ライフは、自分は決してこの見た目通りの人間ではないと言った。実際の実年齢はあなたよりもずっと上だ。それでも、長い時をこんな場所にこんな姿で一人で隔離され、今では自分が何者なのかすら判然としない。いつ自分の力が尽きて悪魔たちにその身を食らわれるか怯えてきた。兄への憎しみに心を焦がし続け気を狂わせて。それでも、決して兄の思い通りになるまい、一日でも長く生きてやると、ここでずっと惨めな生に縋ってきた。ここから助け出してくれる誰かが現れる儚い夢を求めて。そんな自分の心がどれほど醜く歪んでいるか。
愛らしい少年、だがよく見れば、そう語る彼の姿にはどことなく外見年齢以上の知性が感じられ、そこには暗い影があった…。
この世話使いの男を見るといい。世話使いの男はいつも用事が済むと水泡のように消えた。スレイは彼は人間ではないのかと驚いた。この世話使いの男はライフが造り出した人造のゴーレムだと言う。傍に置いて便利であるし、ここに一人きりでは寂しかったから。こうして、人造の隣人を作り出そうとすれば、いくらでも作り出せる。だけど、それは自分ひとりの想像以上のものではない。あなたはここでそんな自分の前に現れた最初で最後の人間なのだ。その温もりが何より嬉しいのに。たとえあなたの手が血に穢れたものだろうと、それこそこの自分には望ましい。罪ならば、極竜からあなたを助けて、冥界の門を開いてしまった自分も同じだ。あなたと同じなのだ。やはりあの時スレイを助けたのはライフの力。
スレイは思わず少年を抱きしめていた。涙がとめどなく頬を伝った。スレイは少年をきつく抱きしめた。この幼い温もりを二度とこの手から離すまいと。ライフは嬉しそうにそっと目を閉じた。
それから、ライフの体は目に見えて萎えていった…。結界も弱弱しくなり不安定になった。スレイは悲しくそれを見守った。そして、ライフは言った。私が死んだら、あなたはその代わりに生きてくれないかと。そして、最後に受け取ってほしいものがある…。スレイはライフに縋りつき、はらはらと涙を流しながら頷いた。
そこへ突然声が振った。茶番は終わりだ、と。そして、そこに蒼い光を放つ槍が投げ放たれた。それが結界の空間を引き裂いた。スレイとライフはそれぞれ別の方向に吹き飛ばされた。そして、ライフの前に立っていたのは、フェイトだった。貴族の精鋭の戦士たちを引き連れて。彼はライフを見下ろしながら言った。久しぶりだな、我が弟よ、と。その瞳には激しい憎しみが宿り、フェイトの美しい顔はこれまでになく醜く歪んでいた…。そう、フェイトとライフは実の兄弟で、極竜と相対した時、体内に流れる兄と同じ血の力によって、ライフはスレイに干渉したのだ。
死に損ないがやってくれたものだと罵ると、フェイトはライフを捉え、その小さな体を捻りあげた。スレイは悲痛にライフの名を叫んだ。そうされて尚、ライフは兄の燃える瞳を冷ややかに見つめた。あなた自ら勇気を出してこんなところまで足を運ぶとは。いまだに私の幻影に頭を痛めていると見受ける。この地獄に私を閉じ込めて尚、私があなたを軽んじる気持ちは変わりません。私はあなたの思い通りにはならない。
フェイトはその言葉にギリギリと歯噛みして怒りに身を戦慄かせ、ギラリと刃をかざした。スレイは悲鳴を上げる。ライフはそんなスレイに静かに微笑んだ。大丈夫、心配しないで。私の命はあなたの中に生きる。あなたはそれを望みますか?スレイはこの瞬間、少年の願いなら何だって聞いてやりたいと心の底から願った。そして、フェイトの掲げた刃の渾身の一打が、ライフの体に叩きつけられ、それを微塵に粉砕して吹き飛ばした。スレイはその光景に絶叫した。そして、美しささえ感じられる血の雨が降るのを呆然と見つめていた。まだ話は終わっていない。
そして、次の瞬間…何かがスレイの体の中で脈打つのを感じた。どくん、どくん…と。命の音。スレイの体内に宿ったのはライフの心臓だった。彼は魔法の力で瞬時にそれをスレイの体内に移動させ結合させたのだ。それはスレイの健康な体の中で新しい生命エネルギーとして息づいた。途端にスレイの体には力が漲った。体の奥から暖かな意識に自分が満たされるのを感じる。自分は一人ではない。少年の命を受け継ぎ、その代りに自分は生きる。溢れる力は目の前の男の力さえ砕く。確信があった。血化粧に染まりながら、その瞳に強い光が宿った。
スレイはフェイトに言った。気付いたことがある。おまえは自分以外の誰も認めようとしない。それゆえにどんなに大きな栄華に満たされていようと、おまえは誰よりも孤独な男なのだ。フェイトは、苦々しくスレイを見つめ、そんな彼女を嘲笑った。正義面して私を断罪するつもりか。おまえのような罪に塗れた脆く醜い女が私に何を言えるのだと。スレイは真っ向から彼を見据え言葉を返した。今更自分が正義を手にすることができるなどとは毛頭思わない。私のしたいことは、ライフの仇を取る。ただ、それだけだ。さあ、相手をしてやるよ。生憎ここはちょうど地獄だ。私とおまえが殺し合うには相応しい場所だろう?ずっとこの時を待っていた。
そして、強い意志で二人は衝突した。他の貴族たちがフェイトを援護する。そこに天から神聖な美しい歌声が舞い降りる。それは神の戯れだった。その声はスレイを祝福する。自分の民である天人ではなく闇に堕ちた人間の娘を。スレイの体はその旋律に反応して、その流れに乗った。踊り子のようだった。体が自由に動く。軽やかに。ひゅっ、ひゅうっと風をきり舞う刃が相手を捉えていく。返し手で背面の相手を打つ。燕のように飛び振り下ろされた敵の攻撃をかわし、突き出されれた刃の上に乗り、攻撃を叩きつける。戦いのエスカレートと共に紡がれる旋律はより鮮明になっていく。そして、ついにその攻撃が追い詰められていくフェイトを捕らえた…。
それから…スレイは混沌に満ちる滅びの大地に一人立つ。彼女はその世界をどこまでも歩いた。それが彼女に与えられた罰なのだ。そして、スレイがそこでなしたことは…。
光と闇が交じり合う、神と冥王は手を組んで踊る、そんな世界での物語―。
後書き
最後まで読んでくださった方、大変お疲れ様でした。
十中八九読むと気持ち悪くて気分が悪くなるような文章だと思われる。
周りの人にもそう言われた。でも、自分ではノリノリで書いてしまった。
でも、後で読み返すと、やっぱり不愉快かも。
でも、今の自分の中からでてきたものがこれなんだよなあ。
私だって本当はもっとピュアで幸せなものに憧れてるんだよ。
でも、私にはそういうものは書けないからね。
私が妄想っぽい話を書いても、それはそれでキモイでしょ。
やっぱり冷血なくらいの客観性に惹かれてしまう。
スレイのようなキャラクターはほんとに扱いが難しい。
同情されるような余地はあるものの、罪深すぎて下手に救済もできない。
でも、あえてこういうキャラクターを書きたい気分だった。
私の中では不良少女のイメージ。エースのモデルはDQN。
フェイトもキモイけど、ライフもキモイ。どうしようと思った。w
でも、こういう痛々しいものと向き合いたかった。
聖人君子や綺麗事や幸せなんて書きたくなかった。なんか空しいんだよね。
そういう気分だった。自分の中にあるものを吐き出してすっきりしてしまった。
ずっと胸の中にあったことに発想が追いついてやっと形になった。
いろいろ甘いところは多々あるけど。構成がぐだぐだすぎる。
ちなみに星の話の焼き直しだったりする。あれはあれでまた別だけど。
私の話には神がよく登場するけど、私は宗教に関心はないし、特に深い意味はない。
でも、ネタ的に使いやすくてなんか使っちゃうんだよな。痛いんだけど。
自作ラノベ。やばい内容です。ご注意を。w
あるところに美しい森があった。そこには一人の魔女が住んでいると言われていた。
そして、そこに足を踏み入れ、彼女に出会った者は、二度と帰ってこなくなるのだと言う…。
ある村に一人の男がいた。名はハンスと言い、彼は冴えない孤独な青年であった。
ある日、ハンスは買い物に出かけ、ある店に入ろうとした時、
戸口から一人の女が出てきたので、彼はその道を譲った。
女はそんな彼に穏かな表情で一礼した。
ハンスはその女の顔を見てはっとした。この村の女ではない。
美しい。その儚げでたおやかな物腰、流れるような艶やかな黒髪、吸い込まれそうな漆黒の瞳…。
ハンスは雷にでも打たれたように立ち尽くし、彼女が去っていく姿をいつまでも見つめていた。
そして、ハンスはそれからこの女のことばかり考えるようになった。
一体どこに住んでいるのか、できればもう一目会えないものかと。
そんな時、彼は村で再び彼女の姿を目にかけた。女は時折この村に用足しに来ているようだった。
彼女の姿を見かける度、ハンスの胸は高鳴り、熱い思いが込み上げてくるようで、それはどんどん強くなっていった。
しかし、この男には彼女に声をかける勇気はなかった…。いつも彼は影から女を見つめた。
ハンスの中で、女は彼の求める偶像であった。彼は淫らな想像に支配された。
その中で女はハンスに微笑み、彼を受け入れるのだった。
彼女に近づきたいと言う思いが芽生え、その思いが抑えられなくなった。
しかし、ハンスはコミュニケーションの取り方を知らない男である。
そして、ある時、ハンスはこっそり女の後を付けると言う行動に出た。
女は木々の茂る道を行き、やがて目の前に美しい森が現れた。
「この森は…。」その森は魔女が住むと言われる、まやかしの森であったのだ。
この森で謎の失踪を遂げた人間は数知れずで、ほぼ誰も近寄ろうとはしない。
女はその中へと入っていく…。一体何故?
ハンスは戸惑い躊躇して立ち止まった。しかし、彼女への想いがそれに勝っていたのだ。
男はごくりと唾を飲むと、意を決して森の中へと足を踏み入れた。
二人は奥へ奥へと進んでいく…。進むほどに、清爽とした緑は暗く色をなくし、
穏やかな木漏れ日、小鳥たちの囀りは、静かな草木のざわめきに変わった…。
そして、女は一つの大木の前に立つと、その手を空に掲げた。
すると、周囲の空気がざわめき、生温い黒い風となり吹き抜け、女に纏わりついた。
女は微笑んでそれを迎え、その風に包まれると、その身はその中へ溶け込み、艶めかしく絡み合った。
くすくすと笑う人ならざる者たちの声がその場に響いた。
「うあ…あ…!」それを見たハンスは恐怖に驚愕した。あの女は人間ではない!
しかし、彼の目はその光景に釘付けになり、その場から離れることもできずに立ち尽くしていた。
一瞬、女がこちらに振り向き、彼に向かって笑んだ気がした。「ひっ!」
その貌は、村で出会った時とは違う、闇を纏った挑発的で艶然としたものだった。
その視線にハンスの心は震えた。ハンスは恐怖すると同時に魅入られていたのだ。
思わず彼はその場から逃げようとして、木の根に躓いて転んでしまう。
すると、その前に誰かが立った。
すらりと伸びた一糸纏わぬ白い足、夢にまで見た皇かな肌、濡れた唇…。
魔女であるこの女。獲物である彼を見つめるその目は、今暗く青い光に輝いている。
「私の森へようこそ。あなたを待っていたわ…。」
ハンスは、ガタガタ震え、破裂しそうな心臓の高鳴りを覚えながら、後ずさった。
「どうして後ずさるの…?ずっと私のことを考えていたんでしょう?
こうなることを。怖がらないで、こっちへ来て…。」
ハンスは一歩引く。魔女はそんな彼に歩を進める。
そして、彼の頬に形のいい手で触れ、優しく撫でた。ぞくぞくするような愛撫だった。
「とくと私を見るといいわ。あなたの全てを食い尽くしてあげる。」
魔女はハンスにしなだれかかった。
彼の唇を自分の唇で塞ぐと、情熱的に絡め、口内に舌を這わせた。
ハンスは今や、流されるがままに押しては返す恍惚と快楽に溺れていた。
そのハンスが衝撃に目を剥いた。「…っ…ごぼっ…!!」彼は声にならないくぐもった声を上げる。
魔女はそんな彼を据わった瞳で見据え、その舌から彼の体内へと、溢れる瘴気を注ぎ込んだのだ。
それは一気にハンスの体のあちこちを伝い、その細胞は沸騰し、めちゃくちゃに姿を変えてゆく…。
人ならざる魔性の魔物へと。
彼女の唇が、手が、自分の体を這う度に、闇へと染まっていく自分を感じる…。
それでも、もう彼はそんなことはどうでもよくなっていた。
「くくくく…あはははは…!」魔女は高らかに笑った。以来、この男の行方を知る者はいない…。
後書きコメント
ネタがやばすぎる。 かなりの爆弾ネタ。
この女怖すぎるだろって言う。サキュバス系かな。
そして主人公のハンスもキモイ。
一体どういう神経してればこういう話が書けるんだって感じだよね。
こういう話をあからさまに書くなと。
メタルとか聴きながら文章書いたら凶暴化した。
エロが下手なのは気にすんな。
自分では結構気に入ってるんだ。w
私の感性はやはり少し謎です。
人に自分のことを見てほしいとはもう思わない。
自分の未熟な理論をひけらかしたり、
些細なことでギャーギャー騒ぎ立てたりはしたくない。
(もちろんここは別だけどね。w)
精神的に一人で立っていられるようになりたいんだ。
人に構ってもらえなければ生きていけないような人間にはなりたくないんだ。
自分の劣等感や罪悪感や傷も、あって然るべきものなら、抱えたまま生きていく。
人に気遣ってもらう必要なんてない。お構いなくと言いたい。w
他人にお膳立てされるのは恥ずかしくて嫌い。親以外の存在には…。
いいのか悪いのか分からないけど、私やっぱり変わったよな…。w
ブラックロッド、ブラッドジャケット、ブライトライツ・ホーリーランド。
時系列の違うパラレルの三部作。すっごい好きな小説。
人に小説勧めるならまずこれを勧めたいってくらい。でも、絶版…。orz
ガキの頃はこれのよさが分からなかったけど、今読むとヤバイくらい来る。w
オカルトが実際の事象として機能している世界。
オカルトなのにやたら理論的で、世界設定の情報量は膨大。
造詣が深くてついていけないことも多々ある…。;
狂気的でぶっ飛んだ独特の発想、
ひたすらハードで救いがなく、負の方向においしいシチュエーション、
情け容赦なく全てがぶち壊されていく様は爽快感すら感じる。とにかく衝撃的だった。
スレイマンとか、人間味の欠片もなくてかなりやばいって思うんだけど、
殺戮と破壊に遊び心を求める、軽薄で血も涙もなくて何者にも屈しない、こいつの暴走にわくわくしてしまう。
精神拘束(グアス)により心を封じられ、それゆえ人格を持たず、
何事にも動じることなく職務に忠実で狂いがない高位魔術師の警官ブラックロッド。
空虚で人として何も持たない彼は人の心に目覚めた時に、己の価値を失う。
人の世界に仇をなす悪魔と共生できる魂を持つがゆえ、その能力を利用される魔女たち。
オリジナルは傷つくことがよう結界の中で無期限の眠りにつき、そのコピーたちが活動する。
神が自分たちを救ってくれることを願いながら、
彼女たちは死後はその魂を悪魔に地獄に引きずり込まれる運命にある。
愛する相手を守り、人として生きたいと渇望するも、
吸血鬼の性により、相手の命を奪うことでしか自分の愛を表現できないロング・ファング。
悲しい結末が待つがゆえに彼が女と結ばれることはない。相手を愛するほどに。
一人の女の命に固執して全てを投げ出したがゆえに、
今まで築き上げてきた誉ある英雄としての自分を失ったアレックス・ナム。
そこにあるのは人々の尊敬を集める大きな男ではなく、愛に崩れ去る小さく弱い男でしかなかった。
あなたの道を妨げるような愛ならば、ない方がいい。女は危機の中で、彼に微笑み自ら死を選ぶ。
そんな彼らの思い、行動の全てが、計画の掌の上。
人格を持つ人間までもが道具となり、その性質を利用され、
いい様に使い捨てられていく、退廃的な高度文明世界。
終いには人の手で自ら神を作り出すと言う、禁忌的な狂気のプロジェクトが動き出す。
全てはそれに飲み込まれ、虚無へと回帰していく…。
合わない方は回れ右がお勧め。
もうルサンチマンにすら縋りたいとは思わない。
自虐で笑いを取れるようになることが今の目標。
口汚い本音全開です。2の話とかも普通にしちゃってるし。w
よい子は真似しないように。
言いたいことを言ってしまってるけど、
私の言葉には何の力もありません。
ここにある文章を勝手に無断転載したりはしないでください。(まずいないとは思いますが。w)
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