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これが私の本性。回れ右して帰るのがお勧めと思われます。www 鬱々したことばっか書いてるけど、 冷凍庫にチョコモナカを発見しただけで幸せになれる安い人間。掃き溜めブログ。
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Posted by - 2025.04.26,Sat
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Posted by 暗黒思い出し笑い - 2008.07.16,Wed

自作ラノベ。人によっては不快に感じられるような陰湿で過激な内容なので注意。
 

ある架空の世界で。元々は人間のものだった地上世界に、いずこからか現れたとある神が目をつけ支配した。この神は狂った神だった。神には自分の血を受け継ぐ民たちがいた。彼らは天人と呼ばれ、神の寵愛を受けけていた。彼らは人間を凌ぐ力を持ち、容姿は細面でそれは美しい。純血ほどその傾向が強い。寿命は長く、三百年以上の時を生きる。彼らは耽美至上主義、享楽至上主義で、自分たちの雅に酔いしれた。そして、人間たちは天人たちを貴族と呼び敬うことを強要され、彼らに虐げられた。貴族たちは人間を自分たちに仕える労働者として、苦しい仕事は全部人間に押し付けた。

そこに年の頃十三になるスレイという名の人間の少女がいた。少女は歳の離れた五歳の幼い弟と母親と三人暮し。
母親は美しい女で、男遊びが激しかった。スレイたちはその淫行の結果できた子供で、父親の名前さえ分からなかった。
母親は育児もほったらかして男を追いかけてばかりいたが、当然そんな有り様では幸せが掴めるはずもなかった。
弟は障害児であった。スレイは母親の代わりに弟の面倒を見ていた。しかし、そんな荒んだ生活の中、純真な弟の存在はスレイの癒しとなっていた。
スレイの中で母親や自分の世界に対する憎しみが育っていった。

この世界には貴族が魔法の力で穿った巨大な大穴がある。その穴に落とされたものは普通の力では這い上がれなくなる。
貴族たちは不要になったものをこの穴の中に放り居れる。目障りな人間や、人間の死体、ゴミなどだ。
貴族たちは自分の品格を唱え、殺人や死と言うものを穢れと言って過剰に嫌悪する。例え相手が人間であったもだ。しかし、死ぬまで相手を酷使することには着目していない。そして、それを処理するために作られたのがこの大穴と言うわけだった。
この大穴の中はこの世に見捨てられた者の巣窟だ。それでもそこは人が生き、スラムとして機能しているらしい。
スレイの母親は子供を邪魔に思う気持ちが募り、薬などに手を出し情緒不安定になっていた。そしてそんなある日、この大穴に子供たちを捨て去ってしまう。そして、スレイと弟はこのスラムで生きることになった。

そこは薄汚れて荒んだ街だった。日は照らず土地は貧しく生活の糧にも乏しく、時折落ちてくるゴミの中から食べ物を探すこともザラであった。僅かな糧を奪い合うため殺人なども多発した。死んだ人間の肉を口にする者も出た。
子供が生きていくには厳しすぎる環境。それでもスレイはここでこのまま朽ちていくことなど悔しかった。幼い少女の瞳に憎しみの炎が宿っていった。
スラムは力の世界だった。力のない者は死んでいくしかない。そして、力の強い者はこの世界で幅を利かせてなんとか生きていくことができたのだ。
他に食べるものもなく死体の肉と向き合った時、スレイは激しい悲しみと吐き気に襲われ堪らない気持ちになった。

特に弟の存在は足手纏いとなってまっていた。ロクな食べ物もないことに弟は泣き叫ぶ。幼児の肉はここではご馳走になるのだ。いつ人狩りに見つかるか知れない。いつも周囲に注意を払い、密かな場所を求めて…スレイはそんな生活に疲れ果てていた…。
そんなある日、スレイはある男に出会う。その男はにこやかでスレイに優しく振る舞い、食べ物を分け与えてやると言う。スレイはこの人なら信用できると思った。
そして、男は一輪の美しい花を取り出した。その花は唯一この痩せた土地で、あちこちに咲いている花だった。その香りを嗅ぐと、スレイの身の周りの風景は一変し、目の前に自分の望むものが現れた。長く目にかかったことのない温かく豪華な料理だ。
スレイはそれを食べてとても幸せな気持ちになった。そして、男はまた食べ物を分け与えてやるから、ただ一人で私と一緒に来なさいと言った。
スレイは弟を一人残して遠くに行くのは心配ではあったものの、あの幸せが忘れられず、一人であの男に付いていってしまう。そして、弟の元に戻ってきてみると、その場はもぬけの殻だった。スレイは凍りに浸させたように真っ青になり必死に弟を探し回った。そうして、見つけたのは弟の見るも無残な姿だった。
そして、周りを見やると、絶望した者があの花の臭いを嗅いで、笑っていた。旗から見ると、そこには何もない。あの花はただの幻覚剤だったのだ。スレイは騙されたことを悟った。
自分のせいで弟はむごたらしく死んだ。もう決して誰も信用すまい。決して癒えない暗い感情が彼女の胸に渦巻き、少女は鬼になった…。可憐な野花が彼女たちを嘲笑っていた…。

スレイがスラムに来て、ニ年が過ぎようとしていた。その容姿は徐々に成長期の美しさに目覚めていった…。
そんな頃、スレイはエースと言う青年に出会う。いかにも不良風の不真面目な男で、それなりに名の知れた食わせ者であった。
この少女は美しく育つだろう。そして、この状況下にあってなお、燃えるような眼光鋭い少女の瞳が、エースには印象的であった。
その容姿は武器にすることができる、自分が教えてやろうかと彼は言い、スレイの手を自分の頬を当てた…。
そして数年、スレイは美しく成長し、自分を守る術、つまり殺しの手段も覚え、エースと共にこのスラムで伸し上がっていった。
スレイを求める男たちは多かった。スレイは彼らに微笑みながら、その誰一人として心を許すことはなかった。そして、彼らを利用して自分の自由自在にしていた。
彼女を守る相方であるエースにさえ心は開かない。男など頼りにならない。自分は一人で生きてきたのだとスレイは自負していた。
そして、胸にはいつも自分を支配しようとする者への憎しみがあった。しかし、長いものに巻かれることも知らずに、反感を買って滅びるなど馬鹿らしいことだとスレイは思った。強い男には媚びておくことだ。そして、自分は安全な場所にいて上手く立ち回り、彼らを操るのだ。
その微笑みが偽りであることをエースだけは知っていた。エースはおまえは心から微笑むことはないのかと彼女に言った。スレイはそんなものは美しい女の特権だろう?この街でそんなものはとうに忘れたと言った。エースはそれを聞いてくつくつとおかしそうに笑った。
それでもエースはスレイとの関係を保った。彼女の心がどうだろうと、エースにはそんなことはどうでもいいのだ。そして、スレイもそれはお互い様であった。お互い利用し合うだけの関係。それでも、スレイの本当の心を知るのは彼だけだった。
壊れた鏡を覗くと母親に面差しが似ていく自分が映っていた…。スレイは鏡を殴りつけた。

そんなある日、彼らに思わぬ蜘蛛の糸が垂らされる。一人の貴族の男がこの地に舞い降りる。天馬が引く水晶の銀細工の馬車から降りたその男の容貌たるや端整端麗で、並み居る貴族たちの中でもこの世のものとは思えぬ美しさであった。正に神の祝福を受けていると言われても、過言ではない。それはとてもこの場には不似合いに思えた。スレイも一瞬我を忘れてその男の美貌に魅入ってしまった。そして、男はフェイトと名乗り、スラムの住人たちに語りかけた。
自分の手にとある血清剤がある。これは天人である自分の血が入っている。それを人間の体に順応するよう特別に調合した。これを体に取り入れれば、幼い子供でも人間の男など遥かに凌ぐ、我々天人たちと同等の力を手に入れることができる。さすれば、この大穴から抜け出すことも容易である。人間たちはその話を聞いて色めきたった。
そして、その証拠としてフェイトは人間の子供にその血清剤を与えた。フェイトは子供にその手で男を殺してみよ、と言った。子供は一人の男に近づき、男の手を軽々とねじ折った。相手を侮った男は絶叫しながら倒れていった。
美しい男。しかし、なんと言う残酷な。貴族であるにも関わらず血の穢れをなんとも思わない。スレイの心にはフェイトに対する嫌悪が湧き上がったが、同時に喉から手が出るほど、その薬が欲しいと思った。あの血清剤があれば、自分はこの環境から抜け出すことが出来る。そして、今まで自分を支配してきたものたちを蹴散らすことができるのだ。

そして、フェイトは言った。残念だが、この血清剤は数に限りがある。このスラムの住人全部に持たせることは無理だ。その一言を受けて、スラムは一気に大規模な殺し合いの惨状と化した。フェイトは狂喜に瞳を輝かせその様子を見ていた。フェイトに近づこうとして突進してくる男を彼は飛ぶようにひらりとかわすと、男の頭を踏み台にしてさらにふわりと高所へ飛んだ。フェイトは彼らをくすくすと笑い嘲弄した。
男たちが殺しあう。スレイは素早く影に隠れ、その惨状を見守っていた。阿鼻叫喚の中人が次々と倒れていく。何という光景だろう。スレイは吐き気を催しながらも、冷静に彼らの様子を見ていた。
男たちは我を忘れて殺しあっている最中だ。そして、フェイトは一人それを悠然と見つめながら街を見回った。スレイは一かバチかその間にフェイトに近づく隙を覗った。そして、皆がフェイトから離れた瞬間を見計らってフェイトに歩みでて薬を求めた。
見やれば美しい娘ではないか。これは驚いた。フェイトはそんなスレイを興味深げに見やった。そして、スレイも同じようなことを思った。近くで見ると、フェイトは本当に美しい男であった。しかし、その面差しは相手を侮蔑するような嘲りに満ちていた。そして、彼は彼女にその血清剤を与えたのだ。
その血清剤を体に取り込むと、激流の中を漂うような感覚に捕らわれスレイの頭は混乱した。しかし、それが過ぎると、すうっと急激に体が覚醒して力が漲るのを感じた。スレイはこの瞬間心から轟然と微笑んだ…。しかし、彼女を待っていたものは…。

満を持して戻ってきたはずの地上だった。フェイトの血清剤はスレイに強い力を与えた。しかし、それには代償があった。通常、誰もスレイの姿をその目に見える者はなく、その声が聞えるものはいなかった。彼女は透明な存在となってしまい、その存在はないものとされた。そして、それを利用して、彼女はフェイトに暗殺者としての仕事を与えられた。それに逆らうことは出来ない。血清剤にあるフェイトの血の力で、フェイトの意志に逆らうことはできない。そして、この血清剤は一種の麻薬のようなもので、これがなければ、精神と体がのた打ち回るような苦痛に襲われる。ゆえにスレイはこの血清剤に依存するしかなかった。フェイトは彼女らのような暗殺者を影と呼んだ。そして、そこにはあのエースの姿もあった。

フェイトは力を持ち、最も神の祝福を受ける男として、貴族たちから祝福を受けていた。しかし、彼は偽善者だ。フェイトの腹の底にあるどす黒いものをスレイたちだけは知っていた。
あるところに人に対しても優しく振舞い、人間の人権を主張しようとする貴族がいた。彼は善人だろう。しかし、フェイトには彼が邪魔であった。そして、フェイトは自分の手は汚さずに、スレイに彼を殺すように命じた。
スレイは自分の行為の醜く深い罪に苦しんだ。しかし、フェイトに逆らうことはできなかった。自分の命のためにスレイはその貴族を殺した。そんな生活の中、スレイの人としての誇りはずたずたになっていった。そして、フェイトは自らの栄華を益々極め、彼は正に全てを自分のものにしようとしていた。スレイはフェイトを激しく憎んだ。しかし、フェイトはそんな彼女の心を容易く見抜き、そして尚それを手の内で弄ぶのだった。そんな憎しみはおまえの逆恨みだとフェイトは言った。おまえは自ら望んで私の手を取ったのだろう。そして、おまえは自分可愛さのために私の血を求めずにはいられないのだと。
スレイは思った。いつか、いつの日か、この男を殺す方法が見つけるまで、自分は生きてやるのだ。途方もない憎しみが彼女を支えた。しかし、それは正しいのか?フェイトの栄光を目の当たりにすると、それはスレイを打ちのめすのだった。それともこんな醜い命などこのまま死んでしまえばいいのだろうか…。スレイは決して強い女ではなかった。いつも揺れ動く激しい激情に捕らわれながら彷徨っていたのだ。
一方エースは環境には深い不満を抱えていたものの、自分の行いについてなど深く考えることもなく仕事をこなして生きていた。エースにとって殺しはストレスの発散となっていた。彼に言わせれば、糞ったれの世界に遠慮する理由などないのである。

スレイたちには貴族に対する暗殺の仕事とは別にもう一つの仕事がある。それは魔物狩りである。この世界とは別次元に魔界と言うものが存在する。それは深い奈落の底に通じ、そこは悪魔たちの住まう世界だ。その悪魔たちが時折、次元の境を越えて、この世界に現れることがある。彼らは神の存在に反応して現れ、天人や人間を食らう。この世界に時折悪魔が現れるようになったのは、神が住まうようになってからだ。そして、天人たちは悪魔と戦う力を持っている。しかし、なかなか進んで戦おうとするものはいない。その代わりの戦力となるのがフェイトの作り出した影たちと言うわけだ。
未知の怪物と戦うのは正に死に物狂いの命がけの仕事である。魔物たちには影の姿が見えてしまうようだ。いくら天人の血の力を借りているとは言え、力の使い方を考えねば死が待つだけだ。しかし、スレイはそこから幾たびも生還した。この死線をくぐる戦いも、全てはあの男をくびり殺す術を得る為だと自分に言い聞かせた。

ある日の魔物討伐の際、相当危険な相手と相対することになった。その仕事はエースと一緒に組むことになった。エースは他の影を利用するだけ利用して協力などしない。そして、この時もスレイを敵のお取りにして逃げようとした。悪魔は人を一人ほどを食らい腹を満たすと、心を静めて魔界に帰るのだ。できるものなら、そのようにしてしまえばいいと言うわけだ。スレイは必死で戦い、戦いながら笑んだ。逆にエースの逃げた道にこそ、大きな悪魔は待ち構えていたのだ。そして、エースは死んだ。スレイは哄笑した。しかし、その頬には何故か涙が伝った…。

そして、あの日の魔物討伐の際、スレイが倒した悪魔が霧となって消滅した際、その腹から穏かに輝く美しい録石が出てきた。
それを拾いあげると、その宝石は喜んだように輝きを増した。そして、そこから詠うような美しい小鳥の鳴き声が聞えてきたのだ。まるでスレイとの出会いを喜んでいるかのように。その録石を手に包み込むと、そこから優しい意識のようなものがスレイの心の中に入り込み、とても癒されるような気持ちになった。この宝石は悪魔に食らわれた美しい小鳥の魂の権化だったのだ。
それから、スレイは一人の時間はいつもその録石の音色に耳を傾け、この時だけは嫌なことなど忘れて心地いい時を過ごした。この宝石に言葉はない。しかし、そこには純粋な温もりが感じられた。それはスレイの傷を包み込むかのようで、それに包まれている間だけは自分に人間らしい感情が宿るような気がしたのだ。この宝石はスレイの何よりの宝物となった。

しかし、そんなある日、起きだして気付くと録石が手元になかった。誰にも見つからぬようにしまっていたはずなのに。必死で探したが見つからない。そして、スレイは後日その居所を見つけたのだ…。フェイトが年頃の貴族の少女と二人で中睦まじく歩いている。フェイトはその少女に微笑みかけた。美しい少女だった。あどけなく純真そうで、身に纏った純白のドレスがよく似合っている。見た瞬間、スレイはこの少女に激しく嫉妬する自分を感じた。まるで醜い自分とは大極である。
そして少女の白く繊細な手を見やると、そこにはあの録石と同じ輝きを放つ宝石の指輪がはめられていた。少女はそれをうっとりした様子で眺め、伯父と慕うフェイトに自分がこんな貴重なものを貰っていいのかと問いかけ、顔をほころばせて礼を言った。フェイトは少女に言葉を返した。この宝石は、下賎の者などには似合わない。おまえのようなものにこそ相応しい。スレイは雷に打たれたようにそれを眺め、その心は抑えきれない憎みに捕らわれた。
フェイトはそんなスレイを見やり、侮蔑したように一笑した。スレイは叫びを上げながら一筋の疾風となって猛然とフェイトに飛び掛った。しかし、その動きはフェイトを眼前にしてぴたりと止められた。振り上げられた手はどうやっても動かない。フェイトはそんな彼女を見やりくすりと笑うと、目に見えない強烈な一撃を浴びせた。スレイは崩れ落ちた。呆然と天を見上げた瞳から涙が伝った…。

そして、あくる日、惨劇は起きたのだ。爽やかな風が吹く静かな空気に包まれた屋敷で、その床が赤い血に染まっている。倒れているのはあの少女だった。柔らかな色の金髪に、透き通った水色の瞳は見開かれ動かない。だらりとたれた細い腕からは血染めになった薄桃色の花が散らばっていた…。そして、スレイは暗い瞳で膝を折りながら、その令嬢を見下ろしていた…。スレイはその手に録石の指輪を取り戻した。しかし、それは凍りついたように輝きを失い、砂のように崩れ去った…。やってしまった後で、どんなに自分が浅ましいかを思い知らされるのだ。それでも自分の感情を止めることができなかった。
丁度そこへ来客者が現れた。それでもスレイはそこから動けず力なく佇んでいた…。そして、現れたのはフェイトだった。そして、彼は言った。おお、なんということだ。可哀相に。一体どんな外道が、こんなに可憐で美しいおまえをこんなにしたのだろう。誰がこんな血の穢れを?誰か来てくれ!そして、フェイトは心底哀れなものを見るような目でスレイを見下ろした。そして、フェイトはこうなることが分かっていたのだ。その上でスレイの行いをただ眺めていた…。そして、その令嬢の葬式は盛大に行われ、多くの貴族が悲しんだのだ。スレイの心は行き場のない怒りと悲しみで粉々に壊れていった。

そして、スレイは罰を受けることになった。幾日も幾日も毎日懲罰房で酷い拷問を受けた。血清剤をもらえることもなくスレイは発狂した。もういっそ死にたいと思ったが、意識は朦朧として、手元に何もなく、自殺する力すらなかった。
そうして、一年が過ぎようとしたある日、スレイは懲罰房からようやく解放される。解放されると思ったのもつかの間、再び血清剤を打たれ、体を拘束されて、スレイはいずこかへ連れ出された。

その場所には深い闇の霧が立ち込めていた。丘があり崖下へとその深い闇が続く。そして、そこから怨念じみたうめき声が風に乗って響いてくる。スレイは場を包む邪悪な空気に緊張が走り、意識がはっきりと覚醒した。
その傍には彼女と同じように幾人もの影が引き立てられている。影をここに集めて何をするつもりなのか。
スレイは影の一人に事情を聞いた。ここは奈落に通じる魔界の扉。扉の主である極竜が飢えに目覚め、ここから解き放たれようとしている。そうすれば、魔界の扉が開き、この世界が混沌に支配される。そうならないように、贄を用意する。その贄が自分たち影なのだと。生身の人間を贄にすれば、さすがの貴族たちの心証も悪くなるし、戦って退けるのも難しく都合の悪い相手。そこで影を使い、貴族たちはさも極竜を自分たちの力で封じ込めたように振舞う寸法なのだと言う。

そして、それは闇から解き放たれ眼前に現れた。それは恐ろしい姿だった。小さな山一つほどもある巨大な体躯、全身は黒光りする鱗に覆われ、体のあちこちは鋭利に尖り、特に巨大な口内は鋭利に尖った牙がびっしり並び、人を数十人は飲み込みそうな雰囲気だった。スレイは恐怖に目を見開き震えた。極竜は荒々しくのたうつように飛び回りながら、逃げ惑う影たちを食いちぎった。あたり一面に鮮血が飛び散った。
このままこの化物に食いちぎられ自分は死ぬのか?世界のためにこの身を犠牲にして、殊勝な話ではないか。そんな彼女の脳裏に一筋の声が振った。君はこのままでいいのか?と。化物の前に傅いて、この世界に傅いて、あの男の前に傅いて…自分にはそんなことはできない!決して、あの男を許さない!!こんな世界など終ってしまえばいい!!瞳が炎が宿り、感情が爆発した。血が沸騰する感覚が体を満たした。スレイの影がくびきから放たれ実体を現した。そのままスレイは極竜目掛けて飛び掛った。フェイトは状況に愕然として、戦士たちを引き連れ、手を下そうとしたが、そこに闇の奧から放たれた不気味な閃光が彼らの目を焼いた。
そして、そこはスレイ一人の独壇場となった。竜の反射速度は恐ろしく速い、それでもそこへ渾身の攻撃を叩きつける。極竜はそれに怯みますます激しく暴れた。右腕を食いちぎられた。激しい痛みが入る。しかし、それでも、右手が使えないなら左手で戦う。尾の一打に内臓が潰される。負けてたまるか。ならばおまえにもっときつい一撃をお見舞いしてやる。そして、ついに致命傷が竜の体を貫く。極竜は一声いななくと、ぐらりと揺れて、そのまま闇の中へと、消えていった。
そして、そこで力を使い果たしたスレイもまた極竜と共にその闇の中へと飲み込まれていった。どこまでも深い奈落へと…。スレイは身に風を受けながらふっと微笑んだ。闇の中へと消えていくと言うのに、何か解放された気分だ。ここまでの罪を犯した自分には似合いの最後だろうと思った。その意識は闇の中に消えていった。
そして、混沌は世界に解き放たれた。まさかこんな事態になるとはフェイトも予想していなかった。これは「おまえ」なのか?フェイトは苦々しい表情で、その深い闇の深遠を見つめていた。その瞳には暗く深い憎悪があった…。

そして、長い眠りの末、スレイは目覚めた。穏かな夢を見ていた気がする。あの母親が夢の中で自分に笑いかけていた。そこは静かな場所で、一面清潔感のある真っ白な部屋が広がっていた。いつの間にか体の傷が全快している。血清剤の禁断症状もない。これは一体…?ここは混沌に満ちる奈落の底ではないのか。自分はまだ夢を見ているのだろうか。壁に耳を当てて外の様子を探ると、闇の中から聞こえたうめき声がはっきりと聞こえる。ここはどこだ!
そこに小さな足音が近づいてきた。現れたのは五、六歳と思われる幼い少年だった。少し痩せ気味な気がしたが、その顔立ちは品よく愛らしい。スレイの様子を見ると少年は、あなたが元気になってよかったと、あどけない笑顔で微笑んだ。ここはどこで彼は何者なのか。それからそこに礼儀正しい世話使いと見受けられる男が現れた。そして、世話使いはスレイとの話を取り持った。

この少年はライフと言い、天人の貴族だ。生まれからとても強い特別な力を持っていた。スレイの体を癒したのもライフの力。ここはやはり冥界の奈落の底の中で、その中にライフが特別な結界を張り、自分の居所としている。
ライフは異母兄弟の兄にその力を恐れられ、呪いをかけられた。呪いによって体は日に日に病み、子供の姿のまま成長することがなく、冥界の奥へと封じ込められ、帰る術はなく幾年もの時をここで過ごしてきたと言う。
奈落の底は広い。ライフは病状のその身で広い範囲は動けないため、冥界の門が開け放たれた今でも、この外に出ることはない。そして、その呪いにより、もうライフの命は長くないのだと言う…。それはあまりに衝撃的な告白だった。

彼らと過ごしていると、彼らはスレイに害意はないようだった。しかし、害意があろうとなかろうと、スレイは今更そんなことはどうでもよかった。ここまでの罪を犯した自分の生死など、もやはどうでもいいことなのだ。
そんなスレイを真っ直ぐ優しさを称えた瞳でライフは見つめた。少年の澄んだ瞳に、スレイは思わず身を硬くして目を逸らした。彼を見ていると、丁度これくらいの年頃で死んだ弟を思い出してしまうのだ。
ライフはそんな彼女に語りかけた。どうしてあなたはそんな苦しそうな目で自分を見るのか。私はあなたを傷つけるような人間ではない。あなたを見て自分と似ていると思った。だから、放っておけなかった。
それに対しスレイは言う。幼い子供が自分を卑下するものではない。真に私を理解してないからそんなことが言える。そして、彼女に触れようとした小さな手を振り払い、言った。私は自分の命ほしさに多くの命をこの手にかけてきた。屑である私が数々の価値のある命を葬ってきたのだ。実に滑稽な話だと思わないか。スレイは皮肉っぽく笑んだ。

ライフは、自分は決してこの見た目通りの人間ではないと言った。実際の実年齢はあなたよりもずっと上だ。それでも、長い時をこんな場所にこんな姿で一人で隔離され、今では自分が何者なのかすら判然としない。いつ自分の力が尽きて悪魔たちにその身を食らわれるか怯えてきた。兄への憎しみに心を焦がし続け気を狂わせて。それでも、決して兄の思い通りになるまい、一日でも長く生きてやると、ここでずっと惨めな生に縋ってきた。ここから助け出してくれる誰かが現れる儚い夢を求めて。そんな自分の心がどれほど醜く歪んでいるか。
愛らしい少年、だがよく見れば、そう語る彼の姿にはどことなく外見年齢以上の知性が感じられ、そこには暗い影があった…。
この世話使いの男を見るといい。世話使いの男はいつも用事が済むと水泡のように消えた。スレイは彼は人間ではないのかと驚いた。この世話使いの男はライフが造り出した人造のゴーレムだと言う。傍に置いて便利であるし、ここに一人きりでは寂しかったから。こうして、人造の隣人を作り出そうとすれば、いくらでも作り出せる。だけど、それは自分ひとりの想像以上のものではない。あなたはここでそんな自分の前に現れた最初で最後の人間なのだ。その温もりが何より嬉しいのに。たとえあなたの手が血に穢れたものだろうと、それこそこの自分には望ましい。罪ならば、極竜からあなたを助けて、冥界の門を開いてしまった自分も同じだ。あなたと同じなのだ。やはりあの時スレイを助けたのはライフの力。
スレイは思わず少年を抱きしめていた。涙がとめどなく頬を伝った。スレイは少年をきつく抱きしめた。この幼い温もりを二度とこの手から離すまいと。ライフは嬉しそうにそっと目を閉じた。

それから、ライフの体は目に見えて萎えていった…。結界も弱弱しくなり不安定になった。スレイは悲しくそれを見守った。そして、ライフは言った。私が死んだら、あなたはその代わりに生きてくれないかと。そして、最後に受け取ってほしいものがある…。スレイはライフに縋りつき、はらはらと涙を流しながら頷いた。
そこへ突然声が振った。茶番は終わりだ、と。そして、そこに蒼い光を放つ槍が投げ放たれた。それが結界の空間を引き裂いた。スレイとライフはそれぞれ別の方向に吹き飛ばされた。そして、ライフの前に立っていたのは、フェイトだった。貴族の精鋭の戦士たちを引き連れて。彼はライフを見下ろしながら言った。久しぶりだな、我が弟よ、と。その瞳には激しい憎しみが宿り、フェイトの美しい顔はこれまでになく醜く歪んでいた…。そう、フェイトとライフは実の兄弟で、極竜と相対した時、体内に流れる兄と同じ血の力によって、ライフはスレイに干渉したのだ。

死に損ないがやってくれたものだと罵ると、フェイトはライフを捉え、その小さな体を捻りあげた。スレイは悲痛にライフの名を叫んだ。そうされて尚、ライフは兄の燃える瞳を冷ややかに見つめた。あなた自ら勇気を出してこんなところまで足を運ぶとは。いまだに私の幻影に頭を痛めていると見受ける。この地獄に私を閉じ込めて尚、私があなたを軽んじる気持ちは変わりません。私はあなたの思い通りにはならない。
フェイトはその言葉にギリギリと歯噛みして怒りに身を戦慄かせ、ギラリと刃をかざした。スレイは悲鳴を上げる。ライフはそんなスレイに静かに微笑んだ。大丈夫、心配しないで。私の命はあなたの中に生きる。あなたはそれを望みますか?スレイはこの瞬間、少年の願いなら何だって聞いてやりたいと心の底から願った。そして、フェイトの掲げた刃の渾身の一打が、ライフの体に叩きつけられ、それを微塵に粉砕して吹き飛ばした。スレイはその光景に絶叫した。そして、美しささえ感じられる血の雨が降るのを呆然と見つめていた。まだ話は終わっていない。

そして、次の瞬間…何かがスレイの体の中で脈打つのを感じた。どくん、どくん…と。命の音。スレイの体内に宿ったのはライフの心臓だった。彼は魔法の力で瞬時にそれをスレイの体内に移動させ結合させたのだ。それはスレイの健康な体の中で新しい生命エネルギーとして息づいた。途端にスレイの体には力が漲った。体の奥から暖かな意識に自分が満たされるのを感じる。自分は一人ではない。少年の命を受け継ぎ、その代りに自分は生きる。溢れる力は目の前の男の力さえ砕く。確信があった。血化粧に染まりながら、その瞳に強い光が宿った。
スレイはフェイトに言った。気付いたことがある。おまえは自分以外の誰も認めようとしない。それゆえにどんなに大きな栄華に満たされていようと、おまえは誰よりも孤独な男なのだ。フェイトは、苦々しくスレイを見つめ、そんな彼女を嘲笑った。正義面して私を断罪するつもりか。おまえのような罪に塗れた脆く醜い女が私に何を言えるのだと。スレイは真っ向から彼を見据え言葉を返した。今更自分が正義を手にすることができるなどとは毛頭思わない。私のしたいことは、ライフの仇を取る。ただ、それだけだ。さあ、相手をしてやるよ。生憎ここはちょうど地獄だ。私とおまえが殺し合うには相応しい場所だろう?ずっとこの時を待っていた。

そして、強い意志で二人は衝突した。他の貴族たちがフェイトを援護する。そこに天から神聖な美しい歌声が舞い降りる。それは神の戯れだった。その声はスレイを祝福する。自分の民である天人ではなく闇に堕ちた人間の娘を。スレイの体はその旋律に反応して、その流れに乗った。踊り子のようだった。体が自由に動く。軽やかに。ひゅっ、ひゅうっと風をきり舞う刃が相手を捉えていく。返し手で背面の相手を打つ。燕のように飛び振り下ろされた敵の攻撃をかわし、突き出されれた刃の上に乗り、攻撃を叩きつける。戦いのエスカレートと共に紡がれる旋律はより鮮明になっていく。そして、ついにその攻撃が追い詰められていくフェイトを捕らえた…。

それから…スレイは混沌に満ちる滅びの大地に一人立つ。彼女はその世界をどこまでも歩いた。それが彼女に与えられた罰なのだ。そして、スレイがそこでなしたことは…。
光と闇が交じり合う、神と冥王は手を組んで踊る、そんな世界での物語―。

後書き
最後まで読んでくださった方、大変お疲れ様でした。
十中八九読むと気持ち悪くて気分が悪くなるような文章だと思われる。
周りの人にもそう言われた。でも、自分ではノリノリで書いてしまった。
でも、後で読み返すと、やっぱり不愉快かも。
でも、今の自分の中からでてきたものがこれなんだよなあ。
私だって本当はもっとピュアで幸せなものに憧れてるんだよ。
でも、私にはそういうものは書けないからね。
私が妄想っぽい話を書いても、それはそれでキモイでしょ。
やっぱり冷血なくらいの客観性に惹かれてしまう。
スレイのようなキャラクターはほんとに扱いが難しい。
同情されるような余地はあるものの、罪深すぎて下手に救済もできない。
でも、あえてこういうキャラクターを書きたい気分だった。
私の中では不良少女のイメージ。エースのモデルはDQN。
フェイトもキモイけど、ライフもキモイ。どうしようと思った。w
でも、こういう痛々しいものと向き合いたかった。
聖人君子や綺麗事や幸せなんて書きたくなかった。なんか空しいんだよね。
そういう気分だった。自分の中にあるものを吐き出してすっきりしてしまった。
ずっと胸の中にあったことに発想が追いついてやっと形になった。
いろいろ甘いところは多々あるけど。構成がぐだぐだすぎる。
ちなみに星の話の焼き直しだったりする。あれはあれでまた別だけど。
私の話には神がよく登場するけど、私は宗教に関心はないし、特に深い意味はない。
でも、ネタ的に使いやすくてなんか使っちゃうんだよな。痛いんだけど。

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Posted by 暗黒思い出し笑い - 2008.03.24,Mon

自作ラノベ。やばい内容です。ご注意を。w

あるところに美しい森があった。そこには一人の魔女が住んでいると言われていた。
そして、そこに足を踏み入れ、彼女に出会った者は、二度と帰ってこなくなるのだと言う…。

ある村に一人の男がいた。名はハンスと言い、彼は冴えない孤独な青年であった。
ある日、ハンスは買い物に出かけ、ある店に入ろうとした時、
戸口から一人の女が出てきたので、彼はその道を譲った。
女はそんな彼に穏かな表情で一礼した。
ハンスはその女の顔を見てはっとした。この村の女ではない。
美しい。その儚げでたおやかな物腰、流れるような艶やかな黒髪、吸い込まれそうな漆黒の瞳…。
ハンスは雷にでも打たれたように立ち尽くし、彼女が去っていく姿をいつまでも見つめていた。

そして、ハンスはそれからこの女のことばかり考えるようになった。
一体どこに住んでいるのか、できればもう一目会えないものかと。
そんな時、彼は村で再び彼女の姿を目にかけた。女は時折この村に用足しに来ているようだった。
彼女の姿を見かける度、ハンスの胸は高鳴り、熱い思いが込み上げてくるようで、それはどんどん強くなっていった。
しかし、この男には彼女に声をかける勇気はなかった…。いつも彼は影から女を見つめた。
ハンスの中で、女は彼の求める偶像であった。彼は淫らな想像に支配された。
その中で女はハンスに微笑み、彼を受け入れるのだった。
彼女に近づきたいと言う思いが芽生え、その思いが抑えられなくなった。
しかし、ハンスはコミュニケーションの取り方を知らない男である。
そして、ある時、ハンスはこっそり女の後を付けると言う行動に出た。
女は木々の茂る道を行き、やがて目の前に美しい森が現れた。
「この森は…。」その森は魔女が住むと言われる、まやかしの森であったのだ。
この森で謎の失踪を遂げた人間は数知れずで、ほぼ誰も近寄ろうとはしない。
女はその中へと入っていく…。一体何故?
ハンスは戸惑い躊躇して立ち止まった。しかし、彼女への想いがそれに勝っていたのだ。
男はごくりと唾を飲むと、意を決して森の中へと足を踏み入れた。

二人は奥へ奥へと進んでいく…。進むほどに、清爽とした緑は暗く色をなくし、
穏やかな木漏れ日、小鳥たちの囀りは、静かな草木のざわめきに変わった…。
そして、女は一つの大木の前に立つと、その手を空に掲げた。
すると、周囲の空気がざわめき、生温い黒い風となり吹き抜け、女に纏わりついた。
女は微笑んでそれを迎え、その風に包まれると、その身はその中へ溶け込み、艶めかしく絡み合った。
くすくすと笑う人ならざる者たちの声がその場に響いた。
「うあ…あ…!」それを見たハンスは恐怖に驚愕した。あの女は人間ではない!
しかし、彼の目はその光景に釘付けになり、その場から離れることもできずに立ち尽くしていた。
一瞬、女がこちらに振り向き、彼に向かって笑んだ気がした。「ひっ!」
その貌は、村で出会った時とは違う、闇を纏った挑発的で艶然としたものだった。
その視線にハンスの心は震えた。ハンスは恐怖すると同時に魅入られていたのだ。
思わず彼はその場から逃げようとして、木の根に躓いて転んでしまう。
すると、その前に誰かが立った。
すらりと伸びた一糸纏わぬ白い足、夢にまで見た皇かな肌、濡れた唇…。
魔女であるこの女。獲物である彼を見つめるその目は、今暗く青い光に輝いている。
「私の森へようこそ。あなたを待っていたわ…。」
ハンスは、ガタガタ震え、破裂しそうな心臓の高鳴りを覚えながら、後ずさった。
「どうして後ずさるの…?ずっと私のことを考えていたんでしょう?
こうなることを。怖がらないで、こっちへ来て…。」
ハンスは一歩引く。魔女はそんな彼に歩を進める。
そして、彼の頬に形のいい手で触れ、優しく撫でた。ぞくぞくするような愛撫だった。
「とくと私を見るといいわ。あなたの全てを食い尽くしてあげる。」

魔女はハンスにしなだれかかった。
彼の唇を自分の唇で塞ぐと、情熱的に絡め、口内に舌を這わせた。
ハンスは今や、流されるがままに押しては返す恍惚と快楽に溺れていた。
そのハンスが衝撃に目を剥いた。「…っ…ごぼっ…!!」彼は声にならないくぐもった声を上げる。
魔女はそんな彼を据わった瞳で見据え、その舌から彼の体内へと、溢れる瘴気を注ぎ込んだのだ。
それは一気にハンスの体のあちこちを伝い、その細胞は沸騰し、めちゃくちゃに姿を変えてゆく…。
人ならざる魔性の魔物へと。
彼女の唇が、手が、自分の体を這う度に、闇へと染まっていく自分を感じる…。
それでも、もう彼はそんなことはどうでもよくなっていた。
「くくくく…あはははは…!」魔女は高らかに笑った。以来、この男の行方を知る者はいない…。

後書きコメント
ネタがやばすぎる。 かなりの爆弾ネタ。
この女怖すぎるだろって言う。サキュバス系かな。
そして主人公のハンスもキモイ。
一体どういう神経してればこういう話が書けるんだって感じだよね。
こういう話をあからさまに書くなと。
メタルとか聴きながら文章書いたら凶暴化した。
エロが下手なのは気にすんな。
自分では結構気に入ってるんだ。w
私の感性はやはり少し謎です。

Posted by 暗黒思い出し笑い - 2007.10.27,Sat

雪の降る日だった。幼い少女が誰もいない道端にうずくまり膝を抱えて泣いていた。
彼女はその日、家から行く宛てもなく飛び出したのだ。
逃げるように走って、それから疲れると、
とぼとぼどこまでも歩いてここまで来たが、行く宛てはなかった…。
少女の両手は赤く汚れていた…。

少女は母親と二人で暮らしていた。陰気な母だった。
彼女は一種の病のようなものに蝕まれていたのだ。
いつも彼女は周りの空気にざわめきのようなものを感じるのだった。
女はそこに何らかの存在の主張を感じるのだ。
そして、「それ」は女の中に入ってきて、彼女の意識をかき乱す。

今、女の目は不安に揺れ、あらぬ宙を見て、ぶつぶつと何かをつぶやく。
体の動きは挙動不審で何をやっているのか分からず、その姿は奇怪だった。
元々は人の思考で動いていた人間なのだが、
この感覚に強く捕らわれている時は正常さを失っていく。
その感覚はある日芽生え、以来日に日に強まっていった。
それと共に彼女は自分の状態を恐れ暗く病んでいった。

この目に見えない気のようなものを魔精霊と呼ぶ。
これは世界のどこにでも存在するものなのだが、
普通の人間はこれを知覚することはできず、何の影響も受けない。

しかし、人間の中にも稀に魔精霊の存在を感じ、それと繋がる者が存在する。
彼らのことを精霊憑きと呼ぶ。
一度精霊憑きとしての症状が発祥すると、それはその人間の中でどんどん大きくなっていく。
魔精霊と深く繋がるほどに、魔精霊はその混沌とした意識を相手に流し込み、
不可思議な力を相手に与える。

精霊憑きの形態は様々で、本人の思考・体質などに影響を受けた個性を持つ。
魔精霊の力に魅入られ、化け物同然の存在となる者も後を絶たず、実に危険な存在である。
それゆえ彼らの多くは人の世界から隔絶されて絶望の中で日陰に生きるのだった。
そして、この不幸はこの親子の元にも訪れたのだった…。

その日、少女の母はいつにも増して状態が悪かった。
一種の末期状態と言っていい。苦しそうに嗚咽を漏らした。
ポルターガイスト現象のように家の家具がガタガタと揺れてあちこちに散らばった。
これこそがこの母親の力だ。少女はそんな母親を心配して泣き縋った。
「こ…の…中は何…!私は何度すれば…!ぐうぅ…あが…っ…ぅぐああ…!!」
「ママ、ママ!大丈夫!?しっかりして!」

そして、母親は錯乱状態となり、その少女を押し倒し、首を絞めた!
「どうして私の邪魔をする!何でこんなことになる!死ね…死ね!死ねええ!!」
「あぐっ!!マ、ママ…!やめ…て……!」
狂気と憎しみをむき出しにした目で少女を見る母の顔がまるで人でないもののように見えた。
もはや母に自分の姿は見えていないのだろうか。自分は殺されるのだろうか。
どうしようもない恐怖と悲しみで心が一杯になり涙が頬を伝った。

少女は必死の思いで自分の首を絞める母の腕を掴みどかそうとした。
その瞬間少女の手に不可思議な力が宿り、その手で掴んだ母親の腕が消し飛んだ!
「ぎゃああああああ!!!」のけ反り倒れる母親。
そして、恐怖に凍りついた目で彼女は少女を見た。「コ…コレット…!!!」
「わ、私…何を…?」精霊付きの因子は遺伝することもあるが、それは確実なものではない。
しかし、この時少女は悟った。母と同じ力が自分にもあることを…。
「あ…あ…!い、いやああああ!!」
コレットと呼ばれた少女はそこから逃げ出した…。

そして、コレットは雪の中にうずくまる。
冷たくなっていく体の中で、手だけがじんじんと疼き震えていた。
母の目にはどんな世界が映っていたのだろう…。
そして、これからの自分は…。

そんな静寂の中、少女の元に近づく、さくさくと雪を踏む音が近づいてきた。
視界に影が映る。見上げると、優しげで品のいい金髪の女が、傘をコレットに差出し微笑んでいた。
「こんなところにそんな薄着でいては、風邪をひくわ。どうしたの?」
「私もう帰るところがなくて…。私は精霊憑きだった…。
それで私を殺そうとしたママを…!!」コレットは顔を覆って泣いた。

「そう…怖い思いをしてしまったのね…。
では、あなたのこれからのことを考えましょう?
私についていらっしゃい。きっとあなたの居場所が見つかるわ。手を見せて…。」
女は優しく言うとコレットの赤い手にそっと触れた。
すると、疼きに震えていた手がすうっと落ち着いた。

「私はローズマリーと言うの。あなたと同じ精霊憑きなのよ。
私はあなたたちのような子供を導きたいと思ってるの。」
この女は自分は精霊憑きだと言った。そんな風には見えない。
そして、コレットの手を癒した不思議な力…。
他に行く当てもなし、コレットはローズマリーについていくことにした。

後ほど、ローズマリーはコレットの母親を診たが、
既に救える状態ではなかった。対処するには時が遅すぎた。
ローズマリーは早い段階でこれをコントロールする術を
精霊憑きの子供たちに教える教師をしている。
そして、残されたコレットの新しい生活が始まった…。

「マリー先生、またあの子が泣いてるよ~。」
「ふええーん!だって全然上手くできないんだもん!私もうやらないっ!」コレットだった。
今彼女がやっているのは、周囲の魔精霊の状態を捉えること、
それに自分が惑わされないように自然に馴染むこと。
精霊憑きに必要な術の基本である。コレットはここで躓いてしまった。

ローズマリーはコレットの元にしゃがみ込んで彼女をなだめた。
「コレット、誰でも最初から上手くできるものじゃないのよ。
失敗は無駄じゃないのよ。そこから学んでいけることもあるんだから。
この教室に来て、それぞれ個人差はあるけれど、この初歩の術ができなかった子は一人もいないわ。
だから私はあなたにもできると思っているの。」
「ほんと…?」「ええ、だから頑張って。頑張ったら、先生休憩時間に美味しいお菓子を作っちゃうわ。」
「ほ、ほんと…!?」「えー!コレットだけずるい!」「あら、もちろん皆の分もよ。」「私頑張る!」

「心を乱したり、がむしゃらになったりしては駄目よ。
集中して、私の手に触れて、私のすることを感じて。
心を落ち着けて、相手をよく見るの。そして、触れてみて。ほら…怖くないわ。」
コレットは素直な心になって集中する。
ローズマリーの手を通して、彼女の感覚が伝わってくる。それを追い、倣った。
そして、摩擦を感じていた空気から手にふわりと優しく何かが触れるような感覚。
魔精霊が自分の中で静かに息づくのを感じた。
「できた……。」閉塞感ばかりを感じて生きてきた自分が始めて自分の力で成したこと。
コレットは心底嬉しそうに笑った。それから彼女は周りに心を開いていった。

それから、何年かが過ぎた。
ローズマリーが自分のいる施設で、二人の普通の人間の男と話をしていた。
「いつも情報と物資の提供感謝しております。
あなたが精霊憑きの問題に貢献してくださることで、
人の世界にまた一つの活路が見出せましょう。」
「それは光栄です。私にできることがあれば、ぜひそれを担いたいと思います。」
男の言葉に、ローズマリーは柔らかに微笑んだ。

それから男が言いよどみながら言った。
「それで…あの、こちらから提供できることについてですが…
我々の方でもなかなか意見が纏まらず…。
精霊憑きと人間の会談と支援の場を設けるのはなかなか難しく、
問題が問題ゆえに、しばしの猶予をいただきたいと申しますか…。
決してあなたのことを否定するつもりはないのですが…。」
「そうですか…。仕方ありません。それが現状ということなのでしょう。」
ローズマリーは動じることなく男の言葉を受けた。

「ところで、話も一段落したころで、お茶でもいかがですか?
子供たちのために大きなパイを焼きましたの。たくさんありますから、ぜひ。」
そう言って優美に微笑むローズマリーに一人の男がでれでれしてしまう。
「え、いいんですかあ?じゃあ、少し頂こうかなあ??」
(おいっ!馬鹿!)それをもう一人の男が影で蹴飛ばす。
「いえ、生徒との団欒を私どもが邪魔するわけには行きません。
これで失礼致します。」「また、お待ちしております。」
そそくさと立ち去る男たちにローズマリーはにこやかに見送った。

帰り際男たちはぼやいた。
「まったく、でれでれするんじゃない!相手は「魔女」なんだぞ?」
「すみません…。」「まったく、何でこんな仕事がまわってくるんだ…。」
「仕方ないですよ。化物どもの情報と浄化草、
精霊憑きを監視する存在は私たちに必要なものなんですから。」
そんな話をする男たちと一人の少年がすれ違った。

「こんにちわ、マリー先生。」
そう言って入ってきたのは少しラフな雰囲気のある普通の人間の少年だ。
「あら、こんにちわ、ランディくん。また背が伸びたみたいね。」
ローズマリーは彼をまたにこやかに向かえた。
「俺も14ですから。うーん、特に美味いもん食ってるつもりもないけど、
なんだかんだで栄養取れてるってことですかね。」
「これ、頼まれてたお薬と菜種よ、持っていって。レネ先生によろしくね。
先生お元気かしら?読書と研究のし過ぎで倒れてなければいいけれど。」
「あの人はたぶんむしろそれが生き甲斐なんですよ。
レネ先生はいつもマイペースで元気ですよ。
でも俺はあの人に感謝してます。マリー先生のような人に巡り合う機会も頂きましたし。」
「ありがとう。そんな風に言ってもらえるなんて嬉しいわ。」

ローズマリーとランディは施設の中庭で少し話し込んだ。
不思議な美しい植物たちがたくさん植えられている。
「さっきの人たちは、都市から来た人たちですよね。交渉は上手く行きませんか?」
「ええ…。その分努力していくしかないわ。
上手く行かないからと諦めていてはそこで終わってしまうから。」
「俺はマリー先生は結果を出してると思うんだけどな。
子供たちだってあなたの元で問題を消化して健やかに育っていくし、
あなたが作った浄化草だって魔精霊の悪性の働きを押さえる確かな効能があるのが実証されてるのに。」

「…きっと今まで私たち精霊憑きが築いてきてしまった負の歴史が大きすぎたということね。」
「そんなもんですかね。俺みたいなガキが言っても説得力ないかもしれないけど、
俺はあなたをおかしな人だとは思わない。
俺は普通の人間のいる世界と違う世界のことも知りたいと思います。
視野を広げて様々な知識を得ていくことが、生きる上で役に立つんじゃないかと思うから。」
「ありがとう。君のような子供がいるから、私も頑張りたいと思うのよ。
あなたのその素直にいろんなことを吸収していこうとする気質はとてもいいと思うわ。
でも、それに自分が振り回されすぎないようにね。人のことも自分のことも両方考えてみて。」

「熱心に社会勉強しているようだけど、君はやっぱり今もダルカスを見ているの?」
「それは…よく分かりません。あの人は自分は正しくないと言って俺の前から去っていった…。
俺はそれから何が正しいと思えばいいのかなんて分からなくなった。
それでもあの人の行動から目が離せない自分がいて…。」
「まだ若い君がそんなことを考えて悩むなんてね…。
こんな世界だけど、どうか健やかでいてほしいと思うわ…。
私はきっとダルカスには彼なりの考えがあるのではないかと思うの。
でも、それを君にとっての「絶対」とはしたくなかったのではないかしら。
それに彼が自分を「正義」とすれば、それに共感できない者たちは傷つくでしょうね…。」

「…あなたは私を慕ってくれるけれど、本当は信用しすぎというのもよくないのよ。」
ローズマリーはそう言ってくすりと笑う。
それから「でも、私はそれを勝ち取りたいと思ってるの。」と言った。
「世界はそれぞれがそれぞれに答えを持つ。それが時にぶつかり合うことは悲しいことだけど。
いつかその中で、皆が幸せになれる方法があればいいのだけれど…。」

ローズマリーの教室にて、子供たちが談笑している。
「君を迎えに来てくれる白馬の王子様なんているわけないよ~。」と一人の子供が言った。
一人の女子がそれにムキになって言い返す。コレットだった。
「そんなことないもんっ!だって本に書いてあるもん!」
「絵本の中にでしょ~。僕は見たことないよ~。もう絶滅したんじゃないの。」
「そんなことない!世界は広いんだもん。」「広かったら逆に探すのが大変じゃん。」
「む…でも、お姫様なら見たことあるもん。だから、王子様もいるの!」
「えーっ!お姫様って誰さ?」「マリー先生!」
胸を張って答えるコレットに今度はこの男子も何も言えなかった。
ローズマリーは「まあ。」とくすくす笑った。

「好きなものを信じればいいのよ。何に幸せを見出すかは自分の感性で決めることよ。
夢は必ず叶うものではないけれど、描いた分だけ何かが得られると思うわ。」
「うんっ!マリー先生大好きぃ~。ねえ、ぎゅってしてえ~。」「ふふ、コレットは甘えん坊さんね。」
コレットは新しい生活を楽しんでいた。以前よりずっと明るくなり、よく笑う子になった。
ローズマリーの存在がコレットにとって全てだった。
彼女を信じていれば自分は幸せになれると疑わなかった…。

そうした日々の中、最近ローズマリーには一つ気にかかることがあった…。
たぎるマグマの底から何者かの目が自分を見つめているような感覚…。
それが時折、鮮明に意識の中に入ってくる。その感覚は徐々に日増しに強まっていく。
ローズマリーはこのことについて調べることにした。

精霊憑きの仲間の一人が彼女に言った。
「やはり500年前に高山のマグマの煉獄に封じ込められた悪魔ガレスではないか?
今奴が蘇ろうとしていると言う噂がある。奴はあんたを見ているということか…?」
遠い昔、狂気に魅入られ強い力を持った精霊憑きのガレスは、長い戦いの末、高山の中に封印された。
ガレスはマグマの中で尚死ぬこともなく、あまつさえそれと一体化し、
彼を縛る特別な鎖も今にも切れそうになっていると言う。
ガレスは精霊憑きの魂を食って、それを自分の力にするのだ。
彼がこの世に現れれば際限のない破壊が始まるだろう…。
「噂が真実なら、私はその峰からできるだけ遠く離れたところに逃げようと思ってるよ。
悪いが、あんたともさよならになるな…。」そう言って男は去っていった…。

ローズマリーは都市の人間たちにこのことを話した。
「なんと…500年前に封じられた悪魔が蘇る…!?」
「ええ、ですから私の話を信じるなら、あなたたちも危機管理を怠りませんよう。
ここに私の調べた限りのデータがありますので、よろしければご参考に。」
「そして、あなたはどうするつもりなのです…?」
「私は…いずれは彼と戦うことになるのではないかと思います。
誰かが止めなければなりません。
恐らくガレスは私を標的の一人として定めています。
彼がこの世に現れれば、いつかは衝突することになると思いますので。
子供たちはあの高山からなるべく離れたところに批難させます。」

そして、やはりガレスは目覚めた。
ローズマリーの脳裏に荒々しい声が響く。『汝、我に魂を捧げるべし―!!』
その瞬間、ガレスの貫くような視線を感じた。そして、彼の体を縛る鎖が弾け飛んだ!
高山が爆発して山一つがこっぱ微塵に砕け散った。
目覚めの咆哮が空と大地を震撼させた。空に激しく紅い火の粉が舞った。
それはまるでこの世の終わりを思わせるような滅びの始まりだった。
(やはり来る!奴は私の元へ…!)ローズマリーは覚悟を決めた。

人間たちの抵抗をもろともせずに、ガレスは突き進んだ。
周囲の魔精霊をその身にふんだんに吸収させて、恐ろしい顔が愉快そうに笑っている。
ガレスは火の悪魔だ。火力兵器は通じない。人間たちは戦力の収集におおわらわだ。
人間たちの元にある相手の力を押さえる浄化草も、この事態には数が足りない…。

こんな時こそ人間たちと協力したい。
しかし、こんな時でさえ、ローズマリーを得体の知れぬ精霊憑きとしか思わない人間たちは
ローズマリーに協力せず、干渉も受け付けず、彼女の動きに関しては静観を決め込んだ。

ローズマリーは子供たちにこの状況を話した。
子供たちは不安で悲しくて、涙をこぼす者もいた。
ローズマリーはその子ら抱きしめ、いつもの優しい笑みを向けて言った。
「私の帰りを待っていてね。」すると、子供たちのささくれ立った心に光が灯るのだった…。

そして、ローズマリーとガレスはついに対峙することになる。
その周りを人間たちの軍隊が遠巻きに取り囲んで見ている。
「ついに合間見えたな。精霊憑きの子供を人として育てようとする愚かな女…。
その芳しい光を放つ魂、夢に見ておったわ。その魂、我が食ろうてやるわ!」
ガレスはビリビリと響く声でそう言って、地を揺るがすような哄笑をした。
その目は焦点が定まらないようにギョロギョロと動き、
しかし、深い狂気の炎に爛々と燃えている。身の丈は3メートルはあろうか。
その肉体は逞しく、火を纏っているかのような色をしている。

ローズマリーはその様子を冷ややかに眺め、失笑した。「何がおかしい。」
「他者を己の糧のようにしか見ることができないあなたの口上を滑稽に感じたまでです。
そのような者が真に何が得られましょう。」「ほざけ!所詮全ては力の前に跪くのだ!」
そして、次の瞬間、ガレスは口から光を放つ高速の火の玉を彼女目掛けて吐き出した。
それが彼女のいた場所を焼いた。しかし、ローズマリーは最小の動きでそれをかわした。

熱波の余韻で彼女の髪留めが解け、金色の髪が風に舞った。
「その手で私を捕らえられるかどうか、試してみるとよろしいわ。」
ローズマリーは微笑んだ。乙女の優美な微笑。しかし、それは氷の微笑だった。
ローズマリーの周りの空気が急速に冷えていき、青白い雷を纏った…。
この男には決して負けまいと誓った。

あのダルカスも遠くでそれを見ていた。ある人間が彼に言った。
「ダルカス、我々の力になってくれるな。あの化物を打ち倒すのだ。
金ならいくらでも出すぞ。兵器も好きなだけ使わせる。」
「…約束はできん。人間の兵器を相手に戦うのとは勝手が違う。
ここまでの精霊憑きの化物は未知数だ。奴相手に俺がどこまでのことができるのかは分からん。
まずあのローズマリーと言う精霊憑きの女の力を見たい。」
「あの精霊憑きの女など、どれだけ当てになるのか分からんだろう。
むしろあんな目障りな女など、あの化物と共倒れになってくれればありがたい。」
ダスカスはそんな人間たちを見て心中で冷ややかに毒づいた。
(身勝手なものだ。ともすれば、その訳の分からぬ女に
我らの命運がかかっているかも知れぬというのに。
無論、手を取り合って共に滅びるつもりは俺もないがな…。)
そして、彼はデータにだけは熱心に目を通した。

精霊憑き同士の力の衝突は実に危険なものである。
人間たちに与える印象もいいものではないだろう。
ローズマリーはなるべく、人の集落がない場所を戦いの場に選んだ。
なるべく事を荒げずに迅速に収めなければならない。
ローズマリーは狙い済ました必殺の一撃を狙うが、両者の攻防は拮抗した。

しかし、ある瞬間から力の均衡が崩れる。「くっくっく、やるな…。こちらも本気にならねばなるまい。」
ガレスはそう言い、空気を吸い込んだ。そして、次の瞬間。「グオオオオオオオオ!!」
ガレスの獣のような咆哮が大気を奮わせた。衝撃で生まれた風が吹き抜けていく。
メキメキと音を立てながらガレスの体が形を変えていく。
そして、正に化物としか言いようのない醜悪な恐ろしい姿に。
「グハアア…爽快な気分だ。力が溢れてくるぞ!力だ!もっと力をっ!!」
ローズマリーにはその姿が滑稽に映った…。

ガレスは本能のままに動き、その攻撃はラフで激しくめちゃくちゃだった。
しかし…その力は圧倒的だった。「くっ!」その攻撃にローズマリーは守りにまわるしかできなくなる。
彼女の表情に苦いものが浮かんだ。「フッ、遅い!」化物が笑んだ。
次の瞬間ローズマリーの体に衝撃が走り弾き飛ばされた。
ガレスの赤く燃える爪が彼女の肩口を引き裂いた。

攻防の中ローズマリーはボロボロになっていった。
心は激しい焦燥に捕らわれた。退くか?しかし、誰も彼女を助けてはくれない。
ガレスは膝をつくローズマリーに近づくと、その豪腕でマリーローズの胴を掴みぎりぎりと締め上げた。
「うっ!かはっ…!あああああ!!」マリーローズは苦悶の悲鳴をあげる。胴が焼ける。
(ここまでなの…!私には…私には守らなければならないものが…!
ここで終わってはならない!ここで終わっては…!!)子供たちの顔が脳裏を過ぎる。
瞳は見開かれバキバキと何かが砕かれる音と共に彼女の意識が弾け飛んだ。

一方子供たちは遠くに避難しながら不安な面持ちでローズマリーの帰りを待ちわびていた。
コレットは他の精霊憑きの気配を読む力のある少女だった。
危機的な自体に感覚が鋭敏になり、師と敵の心身の動きが彼女の心に鮮明に伝わってくる。
「きゃああ!」コレットは思わず悲鳴を上げて泣きながら頭を抱える。
「どうしたのっ!?」仲間が不安そうに聞く。「このままじゃ…マリー先生が死んじゃう!」
「そんな…嘘だろ!」他の子供たちもますます動揺した。そして、コレットは何かを感じ取りはっとした。
そして、コレットはがくがくと震え身を崩した。「マリー先生…!駄目…駄目…!!やめてええっ!!」

ガレスの腕に捕まっていたローズマリーの体が一瞬のうちに黒い霧となり掻き消えた。
「何っ!?」驚くガレスに間髪入れずにローズマリーはいずこからか一撃を見舞った。
ガレスは身を弾かれる。そして、目の前に立ち現れた彼女には只ならぬオーラを纏っていた。
「くくっ、いいぞ、その目だ…!
全てを貫くかのような狂気の炎がおまえの目にも燃えておるわ。来るがいい!」

自分の心臓が激しく脈打つのを体中で感じる。
魔精霊が自分の中に荒れ狂うように吹き込んでくるのを感じる。
ローズマリーの意識は正気と狂気の狭間でせめぎ合っていた。
肩で息をしながらローズマリーは強い意志で言った。
「認めない…!誰にも…私の願いを奪わせはしない!」
「ほう、まだ正気を失っていないか。さらに深く「こちら側」に来るがいいぞ。より深く!」
ローズマリーの変化を誘うようにガレスは強力な攻撃を仕掛けた。
戦いはエスカレートしていく。空が荒れ狂う。人間たちは慄いて彼らの攻防を見ていた。

「がっ…ああ…!」炎に包まれるローズマリーの背中がメキメキと音を立てて割れ、
そこから漆黒の翼が生えた。抗えない強い流れに飲み込まれてゆく自分を感じる。
この男を倒すために自らも彼と同じように化物へと変化していくのか。
「黒き翼か。おまえはそれで何を得たいのか。取り澄ました貌より似合いぞ。
否定できまい、力に高揚していく己を。今こそ力を求めることでしか己を救えぬと思い知れ!」
(私は…違う…!この男とは…!憎い…!!)必死の願いが追いつかない。そして…
そこに空から轟音と共に爆撃の雨が降り注いだ。人間たちの攻撃が始まった。ローズマリーもろともに。

ガレスは愉快そうに哄笑した。
「面白いぞ!屑のような人間どもが、どれほどのことができるのか見せてみろ!」
そして、ガレスは宙に手をかざすと、そこから放たれた熱波が敵機を炎上させ容易く打ち落とした。
「女、おまえは何を憎む―?我か?それともこの世界ではないのか!
哀れなものよな、おまえがいくらなけなしの努力をしたところで無駄なことよ。
世界がその前に立ちはだかり振り向くことはないからだ!
心地いいと思わぬか、その全てを焼き払う炎を?それが精霊憑きの生ぞ!!」
人間たちの行為にローズマリーの心は砕かれた。押さえつけていたものが一気にもろく崩壊した。

混濁してゆく意識の中で崩壊していく大地を夢に見る。その未来も遠くはないのかもしれない。
自分はそれをどうすることもできず、化物となりそれに加担するのか。
もう考えるのも疲れてしまった。その脳裏で自分を呼ぶ小さな声が聞こえる。
声が大きくなっていく。必死に自分を呼んでいる。呼ばれた先に雪の中で泣いている少女がいた。
(泣かないで…。ごめんなさい…私にはどうすることもできない…。)その手を握ってやることもできずに…。
そんなローズマリーの手を逆にその少女がしっかりと掴んだ。
はらはらと涙を流しながらも強くまっすぐに少女はローズマリーを見ていた。
「マリー先生、負けないで。先生の求めているものはあの人とは違うよ。
世界がマリー先生を受け入れなくても、その中で何かを忘れてしまっても、
コレットたちは先生を忘れないよ、ずっとずっと。いつまでも見てる。それは変わらないから。
先生は私たちにたくさんのものをくれたんだよ。だから負けないで!!」

その声にローズマリーの意識は引き戻された。混沌とした意識が瞬時に冴え渡る。
そう、これはいつもの自分だ。膨大に圧し掛かる魔精霊を強い精神力で制御する。
決して忘れてはならないものがある。黒い翼。負けまいと思いながらも、
自分はこの世界から逃れ、いずこかの遠い世界に羽ばたきたいと思っていたのかもしれない。
関係ない。例え世界に拒まれようと自分の居場所はあるのだ。あの子らの元に。
守るべきもの、戦うべき理由、それはしっかりと自分の中にあるではないか。

その変化にガレスは気付く。「まだあがくか。己の姿を見るがいい。その姿で何を願う!」
「そうね。私のこの姿は醜いでしょう。それでも私は足掻くわ。
この翼で羽ばたくならば、あの子たちのもとへ飛んでいきたい。
この世界はあなたの好きにさせるにはもったいないわ。」
そう言ってローズマリーは微笑んだ。涼やかに。

ローズマリーは身を極限までの冷気に包んだ。
(私は例え砕かれようとも恐れない。自分を信じるわ。
この身を一筋の刃に変えて、この一撃に全てを賭ける―!)
そして、氷の刃となり、ガレスの荒れ狂う炎の中を駆け抜けた。
その刃はガレスの胸を貫き穿った。
「何だと…?我は…この女に敗れ去るのか…?」この一撃でついにガレスの巨体は倒れた。

そして…ガレスの身に宿る灼熱を氷体に浴びたローズマリーもまた倒れた。
身が焼かれ崩れてゆく…。その中で彼女は思った。
(ああ…もうあの子たちの元に帰れないの…。まだまだ努力が足りないのね…。
こんなに遠くで…頭を撫でてやることもできない…。
でも、一矢報いることはできたのではないかと思うから、どうか許してね…。
私はあなたたちに救われたわ。ありがとう…。)崩れ去った体は灰となり、空を舞った。

その光景を見ていた人間たちは言葉を失っていた…。
今、闇を照らす朝日が昇ろうとしている。

コレットは師の心を感じ取っていた。そこに荒々しく暖かい光を見た。
コレットを始め、子供たちは彼女を囲んでわあわあととめどなく泣き続けた。
子供たちは指針となる存在を失った。これからは自分たちだけで歩んでいかなければならない。
それでもローズマリーが残してくれた希望を子供たちは感じていた。
これからは自分たちがそれを受け継ぎ強くならなくてはならない。皆がそう思った。
「マリー先生、マリー先生…!」彼女はこの世界から消えてしまったのに、
その存在がこんなにも強く自分の中に溢れる。「私、強くなる…!」少女は小さな胸に誓った。


後書きコメント
何を思ったか戦闘物に憧れてこんな話を書いた。
ガレスは荒々しく化物じみて、戦闘的なキャラクターを強く意識して書いた。
しかし、見事に描写に失敗している感がある。
ローズマリーは一見物腰柔らかだが、内に強さを秘める女。
クレバーで芯が強く、苦境の中で決して負けまいと生きてきた。
最後まで味方はおらず、何のいい思いをすることもなく、戦ってズタボロになって散っていく。
私は自キャラと距離を置いて突き放して書くのが特に好き。
ローズマリーの話には特にそれが強く出てる。
皆に愛されてちやほやされるタイプよりは、
踏みにじられてなお立ち上がるようなタイプにすごく惹かれる。
彼女が女だてらにこういうキャラクターであることも一つのテーマ。
Posted by 暗黒思い出し笑い - 2007.10.20,Sat
10歳の少年ランディ。ある町のとある孤児院にいる。
英雄の伝説に憧れてチャンバラしているようなやんちゃな少年だった。
この世界は凶悪な魔物など不可思議な存在などもいるが、
人の世界は科学がめざましく成長し始め、人間はそれを武器にして力をつけて行った。
鉄と煙が世界に満ち、最初は他の生物から人を守る手段だったそれが、
いつしか逆に人の世界にまで争いをもたらすことになっていった…。
ランディのいる町は、そんなもののない目立たぬ小さな町だった。

そして…ある日そんな町に軍が攻めてきた。
追われているある国の要人がこの小さな町にこっそり逃げてきたのだ。
しかし、情報は漏れて、追っ手が迫り、この町は戦火の犠牲になった。
力のない小さな町はひとたまりもなかった…。人々は逃げ惑う。

ランディは孤児院を出て、ちょうど町中に用足しに来ていた。
傍にいた大人はおまえも早く自分の保護者たちと落ち合って逃げろと言った。
その時、孤児院の方角に空から何かが落ち光を放ち炎上した…。
ランディはそれを呆然と見て…それから孤児院の方に駆け出した。

孤児院に近づくほどに熱気が流れてくる。
肌の熱さを苦しく思いながら、それでも仲間たちの元へ近づいた。
建物はゴウゴウと燃え盛っていた…。その光景を見た少年の瞳が震えた。
庭に転がる小さな黒い死体はもはや誰のものだか分からない。
崩れ落る建物の隙間からの隙間から、もがいたように伸びた誰か手は、もはや動かない。
絶望的だった。少年は皆を呼んだ。「皆…誰か…。誰か生きてないのかよ!
ケント!ジル!ハンナ先生!!誰かあああ!!」

そこに一つだけ孤児院の外の遠くから少女の声が答えた。
「誰…?ランディなの…?」「ファリス!!」ランディはその少女に駆け寄った。
「急に何かが光って、それから真っ暗で何も見えないの…。皆…どこにいるの…?」
「おまえ…目が……。」

そこから少年は少女の手を引いて町の中を逃げた。
混乱した町の中で我先にと逃げる人々に時に揉まれる。
ひらすら悲しくて悔しくて涙が流れるが必死に歩を進めた。

少女と離さないように繋いだ手を強く握り締めた。
ファリスはそれが痛かったが何も言わなかった。少女にはその手だけが頼りだった。
「ちくしょう…ちくしょう…!」そう少年が悔しそうに呟く声が聞えてくる。
その姿は見えない。ただ悲しみが伝わってくるだけだった。

二人がいた場所に近い空から、何かが降り注いでくる。人から悲鳴があがった。
しかし、その降り注いだミサイルを他の方角から来た別の光弾が的確な軌道でそれを爆砕して相殺した。
そして、そこに一つの無骨な鉄機が素早く舞い降り市民を庇った。

その機体から声が振った。『この町に来襲したA軍を追うB組織の者だ。この町に味方する。
南西に逃げろ。C地帯まで進めば、そこに救助隊が来る。』低い男の声だった。
そして、そらからその鉄機は、すぐさま敵に向かい、
敵の攻撃をひらりひらりとかわしながらも、そのまま駆け抜け敵に攻撃をくわえた。
その軌跡の跡に敵機が次々と爆破されていく。

「すげえ…!!あの機体普通じゃねえぜ…!たった一機で一気に相手を圧していく。」
「間違いない…!あれはあのダルカスだ。この町に救世主が現れやがった…!」
それに引き続いて、友軍機が現れ、それに続いた。
ランディはそれから目が離せず逃げるのも忘れて立ち尽くしていた。
少年は夢に見た英雄の姿を正に今その目にしている。そして、町は壊滅せずに済んだ。

少年は、戦いが終わり兵器を片付け、そこから離れようとしたあの男の元に現れた。
そして、彼に言い放った。「俺をあんたの弟子にしてくれ…!」
男はそれを振り向き怪訝そうに一瞥した。切れ長の鋭い目をした無骨な男だった。
「俺の周りの人はほとんど死んじまったんだ!
あんたみたいな力があれば、皆の敵を討てるだろ!皆を守れるだろ!
俺はあんたみたいな凄い奴になりたいんだ!だから!!」必死な目だった。

男はその幼い子供を見やり静かに口を開いた。
「勘違いするな。俺は英雄や救世主ではない。ただの戦士だ。
俺に憧れを持つことなど愚かなことだ。」
「嘘だっ!あんたは町の人を守ったじゃないか!」少年は涙を流した。激しく言った。
「仕事だからだ。仮にそうだとしても、俺は正義や理想などを唱える気はない。
俺は金で人を殺す仕事をしているただの傭兵だ。
それが分からぬ子供が俺についてくる必要はない。
憎しみに捕らわれず頭を冷やして、身の丈に合った己の幸せを考えろ。
戦うことより、どうしたら逃げることができるのかを学ぶのだな。」
少年は、言葉に詰まり何も言い返せなかった。ただ何も…。

男はその場を去った。そして心中で思った。
少年の目が心に残った。(やれやれ…まさかあんな子供に出会うとは。
それだけ追い詰められた世界だと言うことか…。)

そして、少年は翌日、再びダルカスの前に現れた。
目立たぬ小さな宿に泊まっているのを一体どこで聞きつけたのか。
宿屋の主人はそ知らぬ顔でいるが。フロントにいたところを絡まれる。

「何故ここが分かった。」「町で暇人を捕まえてあんたのことを聞いてまわった。
酒場に行ったら、おっさんたちが祝杯で盛り上がってて、
ついでに特製の毒汁を最後まで飲み干せるかゲームをやってた。
俺もそこで賭けに乗って、全部飲んだ!しばらく目が回って上手く歩けなくなったけど。
そしたら、情報屋が笑っておまえに情報をやるって。」
男は話を聞いて頭が痛くなってきた。
その酔っ払い親父どもも他に今やることはなかったのだろうか。

「前に言ったことが分からなかったのか。おまえには無理だ。自惚れるな。」
「それでもあんたは俺と話してくれたじゃないか。
俺はガキだろうけど、あんたのことが知りたい。
あんたの知ってることを少しでも教えてほしいんだ!」

「俺は保父ではない。迷惑だ。保護者を失ったなら他に適した者を探せ。」
「金を払えばいいんだろ?ここにちょっとだけど、酒場で手に入れた金があるから。
後は出世払い!あんた人から大金は取らないんだろ。
聞いたんだ。あんたは表立って皆に何か言ったりしないけど、汚い仕事はしてないって。
前にあんたの言ったことの意味が分かったんだ。それでも…!」
なけなしの金を握り締めて言う。これだから子供は扱いに困ると思った。

「俺はおまえの甘えに付き合うつもりはない。
強さを求めるなら、それは自分の手で求めていくものだ。」
「何で……!あんたは強いのに何で人を助けてくれないんだよ!!
このまま何もできずに泣いてろって言うのかよっ!!」
「それをどうするかはお前次第だ。
おまえは俺に教わろうとする前に一人の人間として学ばなければならないことがまだまだあるだろう。
来るならそれをこなしてからこい。依頼に見合うだけの報酬を持ってな。」

そして、男は町から出て行った…。
そして、ランディは自分の思いは叶わない、自分の手はダルカスに届かない、
彼の言葉にそれを思い知り、ひたすらわあわあと泣いた…。
そして、それでも少年は去っていく男の背中から目を逸らせずに、育っていくのだった…。


後書きコメント
この話にはこの後に二つ続編エピソードが続く。
これはすごくつまんない話にしか書けなかったけど、
まず序章としてこれを書いておかないと、この先の話に発展しない。
ダルカスは今後も要所で登場し、話の核のキーになる存在。
ダルカスとランディの関係は、自分なりに力のある者とない者、大人と子供の対比として書いた。
ランディは自分なりの道を歩み、決してシリアスぶった人間には育たないのだが、
その根本にあるものはどこか泥臭く物悲しい。彼が見つめる先にはダルカスの姿がある。
Posted by 暗黒思い出し笑い - 2007.09.17,Mon
自作のファンタジーの設定を考えてた。
ぐだぐだで纏まらない…。
つーか、あれこれ考えてみたものの具体的に書けそうにない。(T∀T)
内容馬鹿すぎるかしら…?かなりきな臭い内容ではある。w


世界観・設定について

<二層解離世界>
天上界、地上、死界に分かたれ、
それぞれに異なる性質を持つ住人たちがいる。
話の主な舞台となる。

<人間>
普通の人間。それ以上の力は持たない。
この世界では立場の弱い弱者である。地上に住む。

<魔人>
人間の肉体をベースとしている種だが、
それに加えて高い知能と魔法の力を持つ。
この力は絶大で、ヒューマノイドの頂点に立つ。
日々研究に精を出して強い文明を築き、
ますますその地位を確立していく。

<魔物>
地上にある死界に主に生息するモンスター。
人とは異なる動物的で獰猛な思考を持ち、
人間の力を遥かに越える恐ろしい力を持つ。
普通生命の育たない土地にむしろ好んで生息する。
環境に合わせて様々な形態を持った者が生まれてゆく。

<天上界>
天空にある聖別された土地。
外敵が触れようとすれば、一瞬でその身が消し飛ぶ。
ある理由から輝きを失った太陽に代わり、光が生まれる場所である。
神と契約を交わしたと言われる魔人ヴァレンが築いた都市、
近未来的で冷たくスマートな景観の魔法都市が広がる。
天上界は魔人の力となる強い魔法力に満たされた空間であり、
そこに高度な魔法文明が発達していった。
住人たちは選民意識が強く文明人ぶっている。
天上人たちは排他意識と保身のため、
自分ら以外のこの世の全てを支配したいと考えている。
しかし、大地から離れたこの土地には
資源が育たないと言う欠落がある。

<地上>
地上は世界の中心から水源が沸き起こり緑の大地が広がる。
唯一生命の育つ場所である。普通の人間たちが質素に暮らしている。
せっせと資源、作物を育成、収穫する生活である。
天上人たちがその地上人を服従させ管理している。
地上人には力はなく、自らそれを求めることは許されない。
天上人はその力で、地上人を外敵から守る代わりに、彼らから食料資源を搾取する。
天上人は、よく働く者には天上への移住権を与えると言っており、
それに縋りたがる者は多いが…。
少数だが天上人に従がわない勢力もいるが、彼らの肩身は狭い。

<死界>
地上世界の中心から離れるほどに広がる不毛の土地。砂漠が多い。
普通の生命は育たないが、恐ろしい魔物たちが生息している。
しかし、こんな厳しい土地にも魔人が築いた集落がある。
ヴァレンと思想の違いから反目する弟のゾムドが
地底の奥深くの何処かに地下帝国を築いた。その景観は無骨で物々しい。
その根は広く世界に張り巡らされていると言われる…。
死界人はこの世界で戦いに学んで生きた。生活の全ては魔物から得た。
魔物の持つ生態エネルギーを奪い、魔法力に還元する。
住人たちは飾らず粗野で乾いた雰囲気。
いかなる場所でも生きていけるようになるのが目標だ。
どんな汚く危険な仕事も利益になれば厭わない、根っからのプロの戦争屋。

<凍てついた第三異世界>
二層解離世界の外に無限に広がる異世界。
過去には様々な個性を成した星々が繁栄していた。
二層解離世界のほとんどの住人は、この存在に気付いていない。

<無垢なる巨人>
宇宙の中で遥か昔に、無垢なる心を持って生まれた、
世界に創造と破壊をもたらす強い力を持つ巨人。
隔離された箱庭で育つが、ある者に連れ出され心を操られ、
世界に絶望し深き眠りにつく。
それと共に全宇宙は凍りつき眠りに落ちた…。
眠りについた巨人の体はやがて一つの星となり、
そこに唯一の生命たちの宿る大地が生まれた。
これがこの二層解離世界の起源である。

<ヴァレンとゾムド>
二層解離世界に降り立ち、
それぞれ異なる国を築き、対立する二人の魔人。
他者を自分の思い通りに懐柔し作り変えようとするヴァレン。
ありのままの他者を自分の力でねじ伏せたがるゾムド。
二人は元は血を分けた兄弟である。
この思想の違いから二人は異なる道を歩んでいく。
巨人の二つの眼をある者が奪い、この二人に手渡した。
一つの眼は光を放ち、もう一つの眼は暗く染まっていた。
二人はそれぞれ好きな方を手に取った。
それにより、永遠の命とそれぞれが望む力を手に入れた。
二つの眼がない限り、巨人は何も見えない、目覚めない…。

<紅き光>
色を失ったはずの宇宙の闇夜の中、
遥か彼方から届く、怪しく紅く燃える一筋の光。
元は二層解離世界の住人だったが、この世界の真理に気付いたことで、
第三異世界の遥か彼方へと追放された賢人ガイアの放つ光。
密かに異世界の中で力をつけていく。彼の心は怒りに染まっている…。

<特異種>
二層化解離世界の第三勢力。
紅き光を受けた影響で地上に生まれると言われる特異な性質を持つ種族。
普通の人間の体から突然変異的に生まれる。
二層解離世界では、その不可思議で未知数の力を恐れられ、
迫害と捕獲の許可が下されている。
世界の片隅でひっそり生きており、人々の世界には表立っては姿を現さないが、
特異種であることを隠して人の世界に紛れ込む者もいる。
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非公開
誕生日:
1999/12/25
職業:
妄想族
趣味:
妄想を綴るだけの人生
自己紹介:
私を嫌いだと言う人は多い。
合わない方は回れ右がお勧め。
もうルサンチマンにすら縋りたいとは思わない。
自虐で笑いを取れるようになることが今の目標。
口汚い本音全開です。2の話とかも普通にしちゃってるし。w
よい子は真似しないように。
言いたいことを言ってしまってるけど、
私の言葉には何の力もありません。

ここにある文章を勝手に無断転載したりはしないでください。(まずいないとは思いますが。w)
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